2012/05/22

愛の雨~ラブレイン14話 vol.2

LOVERAIN14話、後半に入ります。


#後ろから黙って近づいてくるハナを待ち受けるこの瞬間が結構好き


さっそくどうぞ。




+-+-+-+

ランチングショーの時間が迫った。
オフィスで業務をこなしていたテソンは立ち上がり、会場へと向かう。
廊下を歩いていると、窓の外にハナの姿を見つけ、彼は立ち止まった。

テソン「先に行ってください。僕はちょっと…」

急いで来た道を戻り、外へ出ると、ちょうどぼんやりと歩いてきたハナを先回りして迎えることになった。

ハナ「?」
テソン「何だよ…。仕事で来たのか?」
ハナ「(頷く)」
テソン「知らないほうがいいと思って言わなかったのにな…」
ハナ「言ってよ。そしたら避けられたのに」
テソン「会ったのか?」
ハナ「(頷く)先輩は参加しなきゃいけないんでしょ?帰るね。また今度」

脇を通りすぎようとしたハナの腕をテソンがふいに掴んだ。



ハナ「?」
テソン「ちょっと話そう」

彼女の手を引き、彼はどこかへ向かって歩き出した。

+-+-+-+

植物園をキョロキョロと見渡しながら歩くユニに職員が声を掛けた。

職員「副園長、ハナさんをお探しですか?」
ユニ「今日はここで作業するって言ってたんですけど」
職員「リゾートの方で何かイベントがあるからって、手伝いに行ったんですよ」
ユニ「あぁ、そうなんですか」

外で待つイナの元へ、ユニが戻ってくる。

ユニ「ここにはいませんね。リゾートのイベントを手伝いに行ったらしくて」
イナ「そうですか。残念だな。一緒に夕食でもと思ったんだが。ところで…ハナが最近、僕の前でぎこちないように思うんだ」
ユニ「そんなはずないわ。私たちもそっちへ行ってみましょうか?」
イナ「そうしよう」

+-+-+-+

ショーの会場では続々と訪れる招待客をヘジョンとミホが出迎えていた。
客にメインモデルとしてミホを紹介するヘジョン。
客に「嫁に狙っていると噂だよ」と言われ、ヘジョンとミホが嬉しそうに笑う。

そこへジュンが戻ってきた。

客が立ち去ると、「どうなったのよ?」と駆け寄るミホの向こうで、ヘジョンは厳しい視線でジュンを睨みつけた。

ヘジョン「帰らせたの?」

ジュンは頑なに目を逸らす。

ヘジョン「二度と私の目につかないようにしてちょうだい。じゃなきゃ、何もしないっていう約束は守れないわ」
ミホ「あれ?テソンオッパ!」

全員が振り返ると、そこにハナの手を引いたテソンが歩いてくる姿が見えた。

ジュン「!」
ヘジョン「!」

ハナは気まずそうに俯いたまま、それでもテソンに連れられて歩いてくる。

テソン「すっかり準備が出来たようですね」
ヘジョン「・・・。」
テソン「僕のパートナーです。チョン・ハナさん」
ミホ「!」

そこでハナがかすかに顔を上げ、頭を下げた。

ヘジョン「・・・。」
テソン「期待してます。楽しみにしていますね」

ハナはそのままテソンに手を引かれ、彼らの前を会場へと通り過ぎた。
呆れるヘジョンとは対照的に、ジュンは顔ひとつ変えず二人に続いて会場へ向かった。

+-+-+-+

客席の最前列に案内され、ハナは戸惑いながらテソンの隣の席に座った。
ステージを挟んで向かい側に座っていたソノが彼女を見つけ、笑顔で手を振ると、ハナはパッと顔を輝かせ、手を振り返した。
急に笑顔になった彼女に、テソンがそっと声を掛ける。

テソン「あの人、よく見るな。親しいのか?」
ハナ「うん^^」

#横にテソンがいると声を掛けるの遠慮しちゃったりするもんだけど、構わず笑顔で手を振っちゃうソノの屈託ない部分が嬉しいね。

裏方スタッフと無線で連絡を取り合うジュンの後ろで、スタイリストがハナに気づき、助手をつついた。
助手は「シーッ」と指で合図をしておいて、チラリとジュンの様子を窺った。

ジュンが何気なくカメラを構える。
レンズを覗くと、そこにちょうどこちらを振り返ったハナが飛び込んできた。



思わずファインダーから顔を上げ、視線を逸らすと、彼は他の方向へカメラを構え直す。

ハナ「・・・。」

ショーが始まった。



+-+-+-+

ユニとイナは植物園からリゾートへと向かっていた。

ユニ「辛いことがあるようなんだけど、ハナが言わないんです」
イナ「辛いこと…ですか」
ユニ「男友だちが出来たって、そう言ってたんです。見た目より慎重で臆病な子だから、これまでいつも友だちとしてつき合うばかりで、誰かとまともにつき合ったこともないんです。あんなに嬉しそうにしてたのに…。何があったのか話さなくなってしまって、とても辛そうなんです」
イナ「・・・。」
ユニ「私たちの幸せが自分の幸せだって、毎日言ってるのに…胸が痛いわ。あの子がすごく辛そうで」
イナ「・・・。」

悩んでいるユニの背中を、イナが黙って支える。

ずっと静かな道を歩いてきた二人の前で、ふいに建物の中から人が続々と出てきた。
ショーが終わったのだ。
その中には、客を見送りに出てきたヘジョンの姿があった。

3人はお互いに気づき、声もなくただ驚いて見つめ合う。

+-+-+-+

テソンが知り合いと話している間、ハナは彼の後ろで場を持て余していた。
彼女の視線はどうしても、向こう側でカメラを触っているジュンの方へと向かう。
彼はあれ以来ハナに目も暮れず、ひたすらカメラに向かっていた。

そこへミホがやって来て、ジュンの隣に座り、彼と腕を組んだ。

ミホ「あたしたち、今日デートするのかなぁ?」
ジュン「顔見るたびにデートのことばっかだな」

ミホにジュンが笑い掛ける。
ミホを振り返ったその視線は、もとに戻ろうとしてふいにハナにぶつかる。
ハナはさっと彼から視線を逸らした。

テソン「行こう」
ハナ「私、約束があるから先に行くね」
テソン「約束?」
ハナ「うん。楽しかったよ、先輩」

テソンの前でハナが背を向ける。
ちょうどそこへ秘書がテソンに声を掛け、彼はハナの背中から目を離した。

ハナの視線の先には、一人で立っているソノがいた。

ハナ「ソノさん!」

#おっ♥ 興奮して思わず一旦休憩しちゃったよ♪

テソンがハナに視線を戻した時、彼女はすでにソノに近づいていくところだった。

ハナ「行きましょ」
ソノ「え?」
ハナ「約束したでしょ」
ソノ「?」
ハナ「行きましょうよ!」

ソノの腕を引っ張り、早くその場を離れようとするハナ。
ソノは後ろを気にしながら、ハナに引っ張られて消えていった。

ミホ「何よ?オッパの友だちってあの子だったの?」
ジュン「…行くぞ」

ジュンがそばにいた助手にカメラを渡し、歩き出すと、ミホがすかさず彼の前に立ちふさがった。

ミホ「このまま行くつもりなら、ホントにおばさんに全部言っちゃうわよ」
ジュン「・・・。全部?」
ミホ「・・・。」
ジュン「好きにしろ。そんなもん興味ないから」

彼は冷たい眼差しで言い捨てると、彼女の横をすり抜けた。

ミホ「どうしちゃったのよ!お父さんとあの子のお母さん、結婚するんでしょ!」

+-+-+-+

目の前で消えたハナを探し、ジュンは建物の外へ走りだした。
そこへ電話がなり、画面を見た彼の顔が曇る。

+-+-+-+

ヘジョンはカフェでイナとユニ、二人と向き合っていた。

ヘジョン「(電話で)早く来て。お父さんがここにいるわ。話がしたいのよ」
ジュン「母さん…」
ヘジョン「早く来なさい」

ヘジョンは電話を切った。

ユニ「ヘジョン…。子どもは呼ばない方がいいわ」
ヘジョン「私の子よ。私をのけ者にして先に会っておいて、子どもは呼ぶななんてよく言えるわね」
ユニ「それについては言葉もないわ」

ヘジョンの視線がイナに移った。

ヘジョン「何から話そうかしら」
イナ「・・・。」
ヘジョン「あなたたちが結婚するって聞いたわ。…卑怯ね」
イナ「・・・。」
ヘジョン「あなたがいくら正しくても、傷つくのはジュンと私よ」
イナ「ヘジョン、すまない。その話は二人でしよう」
ヘジョン「イヤよ。ジュンが来たら、全部私の好きなようにするわ」

彼女は大きな目で二人を交互に見据えた。

+-+-+-+

会場の裏。噴水のある庭はひっそりと静かだった。
ソノが飲み物をたっぷり買って来て、ハナの前に広げる。

ソノ「さぁ、何でも好きなもの選んで!」
ハナ「どうしてこんなにたくさん?」
ソノ「当ててみましょうか?今、ハナさんに必要なものは…」

彼は袋の中から赤い缶を拾い上げる。

ソノ「ほら」

ハナは彼が差し出した缶を受け取ると、ソノは缶を握った彼女の手を躊躇いもなく両手で包み込んだ。



ソノ「人の体温、36.5℃」
ハナ「?」
ソノ「プラス、缶コーヒーの温度、20℃。合わせて56.5℃。僕が今、ハナさんにあげられる温かさですよ」

分かったのか分からないのか、微妙な表情で微笑むと、ソノが「おっ、熱い!」と両手を離した。

ソノ「ハナさんの体温を足すの忘れてた!ははっ、93℃。やけどするところだったな」

ハナが笑った。

ハナ「ありがとうございます。一緒に出て来てくれて」

+-+-+-+

ジュンはまだハナを探していた。
そこへ、ベンチでソノと一緒に座っている彼女を見つける。

ソノにもらったコーヒーを握りしめ、ハナは俯いたまま口を開いた。

ハナ「ホントは…私すごく辛いんです」

彼らの背後で、ジュンはその場に立ち尽くした。

ハナ「私…今までただお母さんの幸せを願ってきたんです。けど、それが他の誰かにとっては、辛くて悲しくて…、苦しい思い出だってこと気づかなくって」
ソノ「・・・。」
ハナ「今日、ソ・ジュンさんのお母さんに会って、何が正しいことなのかもう分からなくなったんです。お母さんの結婚も、ただ幸せなだけじゃなくなりました」
ソノ「・・・。」
ハナ「怖いし…悲しいんです」



ハナ「本当は彼にすごく会いたかった。彼を選択すればよかったって、何度も後悔してるんです。このまま行くとこまで行けば良かったって…」
ソノ「・・・。」
ハナ「本当に…時間が全部解決してくれるのかしら。じっと耐えてれば…全部忘れられるかな…。私…」

そのとき、そっとやって来たジュンが彼女の腕を取った。

ハナ「!」
ソノ「?」

ジュン「行こう」
ハナ「?」
ジュン「行って全部話すんだ」
ハナ「・・・。」
ジュン「そうしよう。最初からそうするべきだったんだ」

ジュンはハナの手を引いて歩き出した。

+-+-+-+

ヘジョンが待つカフェに、ジュンがハナを伴って現れた。
下を向いていたジュンが、意を決して顔を上げる。

ヘジョン「来たわね」
ジュン「話があるんです」
ヘジョン「私が先よ」

言い終わるやいなや、ヘジョンはいきなりコップの水をユニに思い切り浴びせた。

ユニ「!」
ハナ「お母さん!」
ジュン「母さん!」
イナ「ヘジョン!」

ユニは水を拭うこともなく、下を向いてじっと耐える。

ヘジョン「祝福なんてしてあげられないわ。絶対に出来ない。えぇ、あなたは行けばいいわ。けど、ジュンの前で一度くらいこのザマを見せてやらなきゃね」
イナ「・・・。」
ヘジョン「知っておくべきよ。私たちがどれだけ後戻りできない川を渡ってきたか。ジュン、あなたが選びなさい。お母さんか、そうでないのか」
ジュン「・・・。」
ヘジョン「二度とこんなに人たちと関わるのはよしなさい」

言うだけ言った彼女は立ち上がり、一人カフェを出て行った。
すみません、とユニに声を掛け、イナが後を追う。
下を向いたまま身動きしない母を、ハナは悲しく見つめることしか出来なかった。

+-+-+-+

「ヘジョン!ヘジョン!」

自分を呼ぶかつての夫を、ヘジョンは振り返った。

ヘジョン「あなたにもう大声上げたくないわ。行ってちょうだい」
イナ「こんなことしちゃダメだ。やればやるほど君ばかりが…」
ヘジョン「結構よ。私の心配なんていらないわ」
イナ「・・・。」

ヘジョンは大きな溜息を漏らした。

ヘジョン「随分前からあなたは私の夫じゃなかった。私たちはとっくに他人同士よ。でも、他の人なら全部許せるけど、ただユニでないことだけを願ってたわ。あの子のことが、どれだけ私を苦しめてきたか分かる?」
イナ「君を苦しめたのは僕だ」
ヘジョン「そう、あなたのせいよ」
イナ「・・・。」
ヘジョン「ジュンだけは絶対にダメ。家族なんて夢にも描かないで」

+-+-+-+

そっと隣に座り、母に呼びかけたハナの声は涙で潤んでいた。

ハナ「お母さん…」
ユニ「大丈夫。私は大丈夫よ、ハナ」

ユニは娘の手を握った。

ジュン「すみません」
ユニ「大丈夫です。私は大丈夫。心配しないで」

ユニはハナに視線を戻した。

ユニ「ハナ、お母さんのこと、一人にしてくれる?」

ハナが静かに席を立つ。
一人になると、俄にユニの目元が赤く滲んだ。

+-+-+-+

力なく外へ出てきた二人に、言葉はなかった。
彼の背中に、後ろを歩いてきたハナがもたれかかる。



二人は長い間そうしていた。

背中と頬。
ほんの少し触れ合った部分から、お互いの悲しみが静かに伝わってきた。

ジュン「…ごめん」
ハナ「・・・。」
ジュン「ごめんな」
ハナ「私も…ごめんなさい」

+-+-+-+

ホワイトガーデンの庭で、チョンソルはアンプにつないだエレキギターを鳴らした。
彼が丹念につるを紐で結んだバラが彼の観客だ。

チョンソル「皆さんに俺の歌を捧げます!(頭を下げ)よろしく!よろしく!よろしく!」

ギターを掻き鳴らし、彼は歌い始める。
カフェの人々が一斉に彼に注目した。

慌てて出てきた店員がギターのケーブルを乱暴に引っこ抜く。

チョンソル「もー!何すんですか!バラに歌を聴かせてやってんのに」
店員「(冷笑)」
チョンソル「聞いたことないんですか?植物だって歌が分かるんだ!」
店員「訴えますよ、ホントに!」
チョンソル「好きにすりゃいいだろ」

店員が戻って行くと、チョンソルはふと気配を感じ、フェンスの向こうを覗いた。
車からミホが降りてくる。運転席の方からはソノが降りてきて深刻な表情の彼女に声を掛けた。

ソノ「ジュンだってここには帰って来ないかもしれないのに、何のために来たんだよ?」
ミホ「それでも待つわ。電話だって出ないでしょ」

二人が門を入って来た。

チョンソル「あっ」
二人「?」
チョンソル「ミホ!」
ミホ「何?」
チョンソル「何って!チョンソルだよ」

ミホは彼の隣に植えてあるバラに視線を移した。

ミホ「それ、あの子が植えて行ったんだよね。全部抜いてやる!」
チョンソル「何すんだよ!こいつら何も言えない命なのに」

バラに手を掛けようとしたミホをチョンソルが慌てて引き止めると、ミホの目に涙が滲む。
チョンソルが彼女の顔を覗きこんだ。

チョンソル「おっ?…何で泣くんだよ。お前がバラを引っこ抜くとか言うからだろ」
ミホ「何でしつこく現れんのよ?まだ田舎に帰ってなかったの?退いてよ!」

ミホはチョンソルを突き飛ばし、カフェの方へと歩いて行く。
自分の前で泣いて怒るミホ。チョンソルの心はまた舞い上がった。

チョンソル「俺どうしちまったんだ?涙に弱いのかな?」

ソノ「あの…どちら様ですか?」
チョンソル「ジュン!」
ソノ「?」
チョンソル「お前、ジュンだろ!」
ソノ「?」
チョンソル「いやぁ、こいつちっとも変わらないな!」

チョンソルはソノの細い体を思い切り抱きしめた。

チョンソル「嬉しいぞ!チョンソルだよ、チョンソル」

ソノはようやく相手の正体が分かり、ホッと息をついた。

チョンソル「やっぱり俺の頭ん中の記憶とピッタリだな」
ソノ「(苦笑)チョンソルか。俺、ソノなんだけど」
チョンソル「!…ソノか!」
ソノ「どうしてここに?」
チョンソル「俺?俺はあっちの離れに住んでんだけど」
ソノ「え?!」

+-+-+-+

ハナは一通の封筒を手に家へと急いでいた。
自宅へ戻ると、その封筒をユニに差し出す。

ハナ「招待状が出来たよ」

ユニがそれを受け取り、中からカードを取り出す。
母の様子を、ハナは黙って見つめた。

Wedding Invitation



繊細なレリーフが施されたカードを開くと、そこには、ソ・イナ、キム・ユニ、二人の名が刻まれていた。

ユニ「変な気分だわ」
ハナ「お母さん、おめでとう。とうとう結婚ね」
ユニ「…このまま私たち二人で暮らそうか?」
ハナ「・・・。」
ユニ「欲を出して人を傷つけたりせずに、このままでいたほうがいい気がするの、今でも」
ハナ「お母さんは自分のことだけ考えて。他の人のことは考えなくていいの」
ユニ「・・・。」



もう一度招待状に視線を落とすユニの瞳は、やはりどこか悲しげだった。

+-+-+-+

セラヴィではドンウクとチャンモがイナの結婚を祝っていた。
30年の長い年月を経て、彼らの純情が実を結ぶのを心から喜ぶ二人。
イナは彼らの前で目を伏せたままどこか浮かない表情を隠せずにいた。

チャンモ「どうした?幸せすぎて言葉もないか?」
イナ「・・・。」
ドンウク「おい、ユニさんのこと本当に幸せにしてやってくれよ。な?」
イナ「…あぁ」
チャンモ「どんな気分だ?男が初恋のロマンを実現させた気分はどうなんだよ?」
イナ「気分?俺は一度失敗してるだろ。愛する人たちの期待を裏切って傷つけた」
二人「・・・。」
イナ「俺も傷ついたしな。それで息を潜めていたんだが、またそうならないか怖いよ」
チャンモ「それはだな!もう二度と傷つけなきゃいいだろ」
ドンウク「お前がユニさんを傷つけることなんてあるわけない。ヘジョンの心配はするなよ。俺たちがいるじゃないか」

#ちっとも役に立たんじゃないか(ボソッ

チャンモ「(ドンウクに)おい、嫁がいるくせに何言ってんだ」

陽気な友人たちに、イナがかすかに微笑む。

チャンモ「心配するな。俺がいるんだ。心配ない」
ドンウク「分かったよ。頼りにしてる」
チャンモ「ヘジョンは俺が受け持つから。うまくいくか分かんないけどな!」

再び笑い声が響いた。

+-+-+-+

ホワイトガーデンに車を停め、降りてきたジュンは不機嫌極まりなかった。

ジュン「だからちゃんと準備しろって言ったろ!モデルにすっぽかされてまともに撮れもしないって噂されるぞ!!!」

やり場のないその怒りは助手に向かう。
背を向けた彼に助手が呟いた。

助手「そのモデル苛めたのは誰だよ」
ジュン「(振り返り)黙れ」
助手「えぇ。全部僕の不手際です。室長の乱暴な性格をコントロールできない僕の責任ですよ。ありがとうございます!」
ジュン「・・・。」

ジュンが溜息をついて階段をあがると、助手の反発にスタイリストが無言でガッツポーズを送った。

+-+-+-+

ソノはガーデンテーブルで白い封筒を見つめていた。
ジュンが門を入ってくると、ソノが立ち上がる。

ジュン「どうした?まだ帰ってなかったのか?」
ソノ「あぁ。お前に渡すものがあって待ってたんだ」
ジュン「何だよ?」
ソノ「俺が渡したほうがいいと思って」

彼は手に持った封筒を差し出した。
ジュンがその場で封筒の中身を取り出す。

父の結婚式の招待状だった。
ジュンは無言でそれを見つめる。

ソノ「行くつもりか?」

ジュンは手早くカードを畳んだ。

ジュン「そんなわけないだろ。行かない」

素っ気なく答え、足早に建物の中へと消えて行くジュンの背中を、ソノは黙って見送った。

+-+-+-+

2階へ上がり、どっさりと荷物を下ろしたジュンは、ソファに身を沈めて溜息をついた。

もう一度、静かにその招待状を開いてみる。
どれだけ見つめても、書かれているその文字は変わらない。
彼は長い間、そうやって考えに耽っていた。



ハナもまた、自室のベッドで招待状を開いていた。

+-+-+-+

翌朝。

2階のテラスから庭を見下ろしたジュンは、しばらくそこで考えあぐねていた。
下へ降り、庭で水を撒いているハナに声を掛ける。

ジュン「どうしたんだ?」
ハナ「学校に行く途中で寄ったんです。苗にちゃんと水を遣ってるか気になったし」
ジュン「・・・。なんでこんなことすんだよ?」
ハナ「私、これからはときどき来ようと思うんです。前みたいに」
ジュン「!」
ハナ「ただ…心のままにするつもり」
ジュン「何だって?」
ハナ「逢いたいときに逢って、会って話して。そうしちゃダメかな」
ジュン「・・・。」
ハナ「私たち、何も悪いことしたわけじゃないでしょ?」
ジュン「・・・。」
ハナ「ただ逢いたいときに…逢いに来ちゃダメ?」
ジュン「いいわけないだろ。もうすぐこうやって一緒にいることさえ過ちになるのに!想うだけで過ちになるのに!本当に家族にでもなるつもりか?」

ハナは涙で震える声を絞り出した。

ハナ「このまま…私と家族になってくれませんか?」
ジュン「・・・。」



言いたいことは山ほどある。
ジュンはそれをかろうじて全部飲み込み、踵を返した。

彼の背中は怒りに満ちていた。
遠ざかっていくその背中に、ハナの瞳から涙が一筋流れ落ちた。

+-+-+-+

イナはキャンバスに向かっていた。
背後で誰かが入ってくる気配を感じ、彼はふと手を止め振り返る。
ジュンがゆっくりと部屋に近づいた。

息子の顔は今にも泣き出しそうな悲壮感に溢れていた。

イナ「私から会いに行くべきだったのに。いつだって私はお前に会いにいけず、ただ思っていただけだった。お前にも、お前の母さんにも、まともに向き合えずに考えてばかりいたんだ」
ジュン「不器用だって言ってましたね…」
イナ「?」
ジュン「あの方がそうおっしゃったんです。不器用な人だって。だから、上手く表現できないだけなんだって」
イナ「…そうだったのか」
ジュン「初めて、ただ不器用な人なんだな…そう思って父さんを見ました。あの方は、父さんにとってそういう人だったんでしょう?」
イナ「・・・。」
ジュン「父さんの長年の愛、正直僕には理解できませんでした。執着して、現実を否定してるだけだって思ったんです」
イナ「・・・。」
ジュン「そうでなきゃ、母さんの被害妄想だって。でも、今は…理解できるようになりました」
イナ「?」
ジュン「話があって来たんです。本当に大事な頼みが」
イナ「・・・。」
ジュン「僕には…愛する人ができました」
イナ「・・・。」
ジュン「心から好きになった人なんです」

息子を見つめ、イナは静かに口を開いた。



イナ「あぁ…。知っている」
ジュン「?」
イナ「・・・。」
ジュン「何て…おっしゃったんです?」

イナの眼差しが、ゆっくりと落ちていく。

+-+-+-+

ランチングショーの会場でヘジョンと会い、その後ユニに水を掛けたヘジョンを追いかけた後、イナは一人、カフェに戻ろうと歩いていた。

そこで…

彼は見たのだ。

ジュンの背中にもたれかかるハナ。
言葉もなく悲しみを分け合う二人の姿を…。

+-+-+-+

イナ「それは…ハナなんだろう?」
ジュン「!…ご存知だったんですか?」

+-+-+-+

ここでエンディングです。

「あぁ、知ってる」か「それはハナだろう?」で終わっといて、なぜ知っているかは次週にまわすとかすればいいのに…なんて、いらんことをまた考える私。テヘッ

もうジュン&ハナの辛さはどうにも悲しすぎるね。うん。悲しすぎて明るく書いちゃうよ♪


19 件のコメント:

  1. yujinaさん、おはようございます!!
    できたてほやほやを、今日もいただきました♪
    “…お互いの悲しみが静かに伝わってきた”
    この一行で、ジーンと泣けてきました。
    嬉しさより悲しみ・切なさを伝える方が、とっても難しいと思うんです。
    yujinaさん、今回も美しい小説を読ませていただきました。ありがとうございました。

    返信削除
  2. この二人の頬と背中から伝わってくる静かな哀しみ‥

    文字から胸を締め付けるゆじなーさん、
    さすがです‥

    この回はユニもイナも、もちろんジュン、ハナ、へジョンそれぞれに悲しくて
    ソノくんの包んでくれた手のぬくもりだけが救いです‥
    昨日も今日も続けてのup、ありがとうございました。

    誰が救いのkey personになってくれるかな‥

    返信削除
  3. 切なさが伝わって、訳と画像が重なって、本当に胸が痛くなってしまいました。
    正に文章マジックとはこういう事だったのかと実感しています。
    yujinaさんが訳されたそのままに吹き替え版ならもっと素敵な作品になるのになぁ~って思います。

    返信削除
  4. お早うございます 

    いつも楽しみに読ませて頂いています。
    それにしても、聞き取り凄いです! 早くて聞き取れないところが沢山あって・・

    Yujinaさんの文章の美しさにはいつも感動させられます
    時々の楽しいコメントも絶妙でいいですね^^

    これからも宜しくお願いします。

    返信削除
  5. yujinaさん
    おはようございます(^-^)

    今回も堪能させていただきました。

    切ない、ただせつないの14話でした(;_;)

    yujinaさんのコメにほっこり(^ ^)

    返信削除
  6. yujinaさん、おはようございます。
    切ない14話・・・yujinaさんの翻訳で切なさが数倍に・・・
    そんな中でもソノの優しさや、チョンソルのKYだけどどこか憎めない?
    二人にホッと一息、癒されています。
    悲しすぎて明るく書いちゃうよ。。。。はい!!!お願いします(笑)
    yujinaさん、そんなお人柄も含めての翻訳ますます楽しみにしています。

    返信削除
    返信
    1. yujinaさん、こんにちは。今回もまた、細かい描写に涙しながら読みました。言葉もなく悲しみを分け合うすがた、本当に重く悲しい場面でした。どうか、良い結末で終わって欲しいと願うばかりです。

      削除
  7. そうですね…背中でジュンとひとつになって、もうどうすることもできなくなった気持ちをやっとジュンと二人のこととして向き合うことになるんですね‼ええな~‼ 悲しみも喜びも恋愛の醍醐味ですよね‼
    もう一回yujinaさんの文章片手にこの回見て、復習しよっと‼‼ でもどうしても画面みずに文章に集中してしまうんですよー^^

    返信削除
  8. Yujinaさま、いつも楽しく拝読しています。
    #ちっとも役に立たんじゃないか(ボソッ…
    というチャンモ&ウンドクへの突っ込みに思わず吹き出してしまいました。

    家族になって…というハナに
    言いたいことは山ほどある。
    の一文とグンソクくんの演技がはまりすぎて鳥肌が立ちました。
    いつもありがとうございます。

    返信削除
  9. yujinaさんへ♪

    ありがとうございます♪
    ジュンとハナ‥悲しすぎて明るく書いちゃうよ♪‥ほんとうに~辛いです‥
    明るくお願いします(ノ^^)ノ

    背中と頬~好きな場面です‥余韻が楽しめて

    緑コメント‥ボソッ 大好き!ツボです(~o~)

    小説の流れのような翻訳を、ありがとうございました。o(^-^)o

    返信削除
  10. サランピ中心生活者(受験生)2012年5月22日 13:41

    yujinaさん☆
    今回も、素敵な翻訳ありがとうございました。

    なんだか、ちょっとテソン先輩の行動がだんだん強引になってきたような気がして
    本当に、へジョンと手を組むなんて事がないか心配になってきました…

    次回の更新も楽しみにしております!
    ご多忙そうですが、ご無理はなさらないでください。

    返信削除
  11. yujinaさん、いつもありがとうございます。
    リアルタイム視聴、言葉はほとんど分からなかったのですが、
    表情見てるだけで悲しくて悲しくて。。。
    想像通りの内容でした。けれど、ジュンの心の内がわかるよう繊細に
    言葉を選んで下さってて、またそれが心に沁みます。。。

    返信削除
  12. イナ「あぁ…。知っている」
    ジュン「何て…おっしゃったんです?」
    この時のジュンの驚きと悲しみ・辛さが痛々しいです。

    やはり、雰囲気だけで見ていて分かっているつもりでも
    yujinaさんの翻訳を読んで、あぁ、そうだったんだなと
    ただ、ただ関心してしまいます。

    yujinaさんの翻訳の力がなければ
    今、こうしてLove Rainの世界に浸ることは出来なかったでしょう・・・
    本当にいつもありがとうございます。

    このまま、15話の翻訳もお待ちしています。
    どうぞ、くれぐれもお体ご自愛くださいネ!!!

    返信削除
  13. ほんの少し触れ合った部分から、お互いの悲しみが静かに伝わってきた。

    プラス緑字突っ込み
    #ちっとも役に立たんじゃないか(ボソッ

    これぞ、yujinaワールド。いつもありがとうございます。今回もまた堪能させていただきました。

    返信削除
  14. yujinaさま、いつもありがとうございます。
    今回も、胸が締め付けられるような切ない描写。心に響きました。
    文字だけでこれだけ、気持ちが伝わってくるyujinaさまの翻訳さすがです。

    これからも楽しみにしています。

    返信削除
  15. ありがとうございます、素敵な文章です。読んでいるだけで、引き込まれていきます
    これからも、がんばってください。 楽しみにしています。

    返信削除
  16. yujinaさん はじめまして
    毎回楽しく?悲しく、せつなく 読ませていただいています。
    私は、チャングンソクさんの大ファンでこのドラマを見ていますが
    yujinaさんのコメントを読んでいるうちに、妙にソノが気になりだして 今ではソノが幸せになってくれたらと
    思っています。あー誤解がないように ドラマのキャラクターが ジュンよりソノが好きだという事ですよ(^^;;
    さあ、これからどんな展開になるのでしょう。。楽しみでもあり…少しでも長く続いて欲しいと思っています。
    yujinaさんのお陰で韓国語の勉強も一段と楽しくなりました。。次も楽しみに待っています。

    返信削除
  17. Yujinaさん、こんばんは(^-^)
    今回も、ステキな翻訳ありがとうございました(^-^)読めば読むほど切ないですね(T-T)


    愛する人と家族になるなんて考えただけでも
    発狂します!きっときっと苦しいはず(;>_<;)私も最後にハナがジュンに寄り添う場面が好きですが、あのシーンをイナは見ていたんですよね。。

    今日で18話、後2話でどういう展開になるのか楽しみです♪
    また、yujinaさん目線のツッコミも楽しみです(笑)(^-^)

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  18. ソノが缶コーヒーごと、手を包んで語った台詞。
    そんな優しい気の利いたこと言っていたとは‼
    ただただ戯けて元気付けている…と思ってました。

    ジュンの背中に寄り添うシーンは、ツボ…‼
    。・°°・(>_<)・°°・。
    背中にハナを感じながら苦悩するジュンの表情が又、ツボ…‼ (T ^ T)

    仕事帰りに庭仕事をするハナに寄りかかるジュンの穏やかな表情を回想しながら、その対比を思うと切ないですね。

    この後も、YUjinaさんのドラマ分析メモも楽しみにしてます。宜しくお願いします。m(_ _)m

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