2012/06/23

愛の雨~ラブレイン18話 vol.1

サランピ18話に入ります。



さっそくどうぞ。




+-+-+-+

「どうしてここに?」

驚いて目を見開いたヘジョンの前で、ハナは言葉を失った。
返事が出来ないハナに、ヘジョンはこれまでに聞いた話を思い巡らせる。


ミホ「庭師なんですけど、ここに住んでるんですよ」
チョンソル「あの子、ご存知なんですか?ハナさん?」
テソン「うちの植物園のガーデナーです」

そして、リゾート本館で息子の向こうに立っていたハナの姿…。
そのとき、息子は「この子は関係ないでしょう」と彼女を庇ったのだ。

ヘジョン「あなた…うちのジュンと…!」
ハナ「・・・。」
ヘジョン「まさか…そうなの?」
ハナ「・・・。」
ヘジョン「ジュンがつき合ってるっていう子は…もしかして、あなたなの?!」
ハナ「・・・。」

ハナはそれでも何も言えず、俯いた。

ヘジョン「何てこと!なぜこんな恐ろしいことができるの?正気なの?」

ショックを受け、フラフラとよろめいたヘジョンに、慌ててハナが駆け寄ると、
「触らないで!」とヘジョンがその手を振り払った。

ハナ「・・・。」

+-+-+-+

緑に囲まれてポツンと佇むベンチに、ユニとジュンは並んで座っていた。

ユニ「元々弱かった目が…また少し悪くなったんです」
ジュン「いつからなんですか?」
ユニ「・・・。」
ジュン「どれくらい…悪いんですか?」
ユニ「こんなふうに時々見えなくなり始めたのは、少し前からなんです」
ジュン「・・・。」

前を向いていたユニが、ジュンの方へ向き直った。

ユニ「まだ誰も知らないんです」
ジュン「・・・。」
ユニ「お願いです。ハナには言わないでください」
ジュン「…言えません。ハナが知ったらどんなに心を痛め…!」

そう言い掛けたジュンはハッとして口をつぐんだ。
ユニがまっすぐに彼を見つめている。

ジュン「僕たちのこと…ご存知だったんですか?」
ユニ「二人共…想い合いっているんでしょう?」
ジュン「・・・。」
ユニ「それも少し前に知ったんです」
ジュン「…申し訳ありません」
ユニ「ハナはソ・ジュンさんのこと、とても好きなようです。あんな様子…初めて見ました」
ジュン「僕も…ハナのことがとても好きです」

ユニはもう一度彼を振り返り、頷いた。

ユニ「ありがとう。そう言ってくれて」
ジュン「・・・。」
ユニ「だから、あらためてお願いします。状況が落ち着いたらハナにも話すつもりですから。自分で話したいんです。少し時間をください」
ジュン「・・・。」
ユニ「ハナには言わないでください」
ジュン「…はい」
ユニ「それから、イナさんにも…できる事ならずっと知らずにいてほしいわ」
ジュン「・・・。」

#最初に知ったのがジュンだっていう設定がすごくいい。

+-+-+-+

ヘジョンとハナはダイニングテーブルで向き合っていた。

ハナ「私たちも最初は知らずに出会ったんです」
ヘジョン「・・・。」
ハナ「事実を知って、苦しんだけど…それでも別れられませんでした」
ヘジョン「・・・。」
ハナ「すみません。だけど…」
ヘジョン「あなたの母親も知ってるの?」
ハナ「まだ…知りません」

ヘジョンは深く溜息をついた。

ヘジョン「ジュンの父親は知ってるわね」
ハナ「・・・。」
ヘジョン「ジュンの父親が気づいて、あなたの母親との結婚を取りやめたんじゃないの?あなたたちのためにね」
ハナ「・・・。」
ヘジョン「…頭がおかしくなりそう。呆れたわ」
ハナ「・・・。」
ヘジョン「一体何の真似なの?」
ハナ「もちろん驚かれるだろうと思いました。だけど…」
ヘジョン「驚くだろうって?あなたたちがやったことが驚くだけですむの?!」
ハナ「・・・。」
ヘジョン「30年の悪夢が終わったと思ったら、こんなところで不意打ちを食らうとはね。あなたとジュンが?…ダメ。絶対にダメ。死んでも許さないわ。息子は絶対にダメよ」
ハナ「・・・。」

ヘジョンは立ち上がり、俯いたままのハナを見下ろした。

ヘジョン「とにかくどうすべきか考えなきゃいけないわ。それまで黙ってなさい」
ハナ「・・・。」
ヘジョン「ジュンには話しちゃダメ。それくらいの分別はつくわね?」
ハナ「・・・。」
ヘジョン「これは決して許されないことよ。あなたが自ら身を引いてくれることを期待するわ」

ヘジョンがハイヒールの足音を乱暴に響かせ、部屋を出て行った。

#ハナ一人でむしろ良かった。ジュンがいたら取り乱して暴れてたね。ハナが相手だから冷静に強く振舞わなきゃいけないっていう自尊心が働いてる気がする。

+-+-+-+

仕事へと戻っていくユニの背中を、ジュンはじっと見つめていた。
彼女の姿が見えなくなると、車に乗り込み、エンジンを掛ける。

私のもとへ来ないでください
もうあなたを愛する自信がないのです
あなたの元を去ろうとしても
これ以上引き止めないで
私を手放して


一つ、二つ…あなたの記憶が
涙と一緒に遠く流れていく


馬鹿みたいに ただあなたを愛して
傷だらけのあなたに気づかずにいたみたい
ここで踏みとどまります
愛する気持ちも断ち切ります
さようなら もう私を忘れてください

ホワイトガーデンに駆けつけたジュンは、車を降り、走って階段を上がった。
庭に彼女の姿はなく、彼は急いで2階へ上がる。
部屋を見渡し、彼女が使っていた部屋の扉も開けてみる。
そして、テラスにつながる扉を開けると…
ハナが植物の世話をしている姿が見えた。

ハナが彼に気づき微笑むと、ジュンはホッとして小さく息を吐いた。

ハナ「おかえりなさい」
ジュン「帰ったかと思った」
ハナ「帰ろうかと思いましたよ。どうしてこんなに遅かったの?何してたの?」
ジュン「・・・。」
ハナ「私がいながら、もう浮気してるんじゃないんですか?」

まっすぐ彼女を見つめた彼は、わざと視線を逸らして空を見上げた。

ジュン「一緒にいた人…確かに綺麗だったな」
ハナ「何なの?!」
ジュン「(笑)」
ハナ「また付き合うことにしたのに、初日からこうなっちゃうの?」
ジュン「今日…また付き合うことにした初日になるのか?」
ハナ「・・・。」
ジュン「(溜息)初日から…」
ハナ「・・・。」
ジュン「何がしたい?全部聞いてやるから」
ハナ「ホント?うーん、何にしようかなぁ」

じっと考えるハナの表情をジュンが覗きこんだ。

ハナ「どうしたの?」
ジュン「どうしたんだ?何かあったか?」
ハナ「(笑)何もないですよ!」
ジュン「顔がいつもと違うけど?」
ハナ「・・・。」
ジュン「?」
ハナ「そうだ、思いついた!…やりたいこと」
ジュン「何したいんだ?」
ハナ「今日は…このまま早く家に帰りましょ」
ジュン「…え?」
ハナ「このごろまともに家に帰ってないんでしょう?お母さんだって、最近いろいろ気を揉んでいらっしゃるだろうし…」
ジュン「・・・。」
ハナ「帰って親孝行してあげてください」
ジュン「・・・。」

不思議そうに黙りこむジュンに、ハナは控えめに微笑んだ。

ジュン「母さんのところに行かせたいんだな?」

彼女はうなずいてふっと表情を濁した。

ジュン「分かった。送ってやるよ」
ハナ「いえ、今日はバスで帰りますから。考えたいこともあって…」
ジュン「お前があんまり考え事するの、俺、嫌なんだけどな。俺のことだけ考えてくれないかな?」
ハナ「(笑)何よ。子どもみたいに」
ジュン「(笑)」
ハナ「まぁ、考えないつもりでいても、考えちゃうけど…」

ハナは恥ずかしそうに彼を置いて中に入った。

ジュン「(笑)へぇ~。俺のことばっか考えてるってことか」

+-+-+-+

二人はバス停で手をつなぎ、静かにバスを待っていた。
黙ってい通りを見つめているハナを、ジュンが振り返る

ジュン「送るだけでもさせてくれないか」
ハナ「今日は一人で帰りますから」

ハナが彼の向こうを覗き、「来た」と声を上げた。

ハナ「行きますね」

行こうとしたハナの手を、ジュンが引っ張った。

ハナ「?」
ジュン「このまま別れたくないんだ」
ハナ「・・・。」



彼の目をじっと見つめたハナは、ふいに背伸びをして彼の頬に口づけた。

ジュン「・・・。」
ハナ「どこか行っちゃったりしないで、ちゃんと家に帰るんですよ。お母さんに良くしてあげて。ね?」

彼女はニッコリ笑ってバスに乗り込んだ。

#「ちゃんと家に帰るんですよ」って言われてるときのジュンのほわぁん顔が良いね(´ー`)

+-+-+-+

ジュンは人気のないスタジオに戻っていた。

ジュン(電話)「調べられそうか?」
ソノ(電話)「眼科は父さんの病院が一番なんだけど」
ジュン「…おじさんの?」
ソノ「患者は誰?」
ジュン「・・・。」
ソノ「知り合いなのか?」
ジュン「・・・。」

+-+-+-+

一人でバスに揺られていると、ハナの心の中にヘジョンに言われたことが次々と浮かび上がった。
自分の手を振り払い、息子は死んでもダメだと言い切ったその言葉が…。

+-+-+-+

自宅に帰ってきたジュンを、ヘジョンが優しく出迎えた。

ヘジョン「おかえりなさい。こんなに早く帰ってくるなんて珍しいわ。どうしたの?」
ジュン「・・・。」
ヘジョン「(ジュンの服装を見て)誰と会ってたの?」
ジュン「気になさらないでください」

部屋へ向かおうとしたジュンに、ヘジョンが言葉を続けた。

ヘジョン「お母さんとちょっと話しましょう」
ジュン「?」

急に切実になった母の目に、ジュンの中で不安がよぎった。

ヘジョン「お母さんね、カウンセリングを受けようと思うの」
ジュン「?」
ヘジョン「アルコール依存症のカウンセリングよ。前に受けたら良くなったでしょう?」
ジュン「(微笑)よく決心なさいましたね」
ヘジョン「そうでしょ?…ジュン」
ジュン「?」
ヘジョン「お母さん、あなたのこと愛してるわ」
ジュン「?」
ヘジョン「私はね、あなたにまで恨まれたくないの。お母さんのこと、気の毒だと思ってくれない?」
ジュン「何がおっしゃりたいんですか?」
ヘジョン「ミホと結婚しなさい」
ジュン「・・・。」
ヘジョン「お母さん、ミホのこと大好きなのよ。娘みたいに”こうしてください””ああしてください”って。可愛いし、友だちでもいてくれるわ。すごく楽しいの。ミホと一緒にいると寂しくないのよ」
ジュン「・・・。」
ヘジョン「小さい頃から見てきたけど、あなたにはあの子がよく似合うわ」
ジュン「それなら諦めてください。僕は決して結婚しません」

ジュンは母を残し、その場を後にした。

+-+-+-+

ハナが帰宅すると、母はリビングで寛いでいた。
手にローションを塗りながら、テレビを楽しそうに眺めている。

ハナ「ただいま。何してるの?ドラマ?」

ハナは母の隣に腰を下ろした」

ハナ「お母さん、このごろテレビ好きだね」
ユニ「見てみると面白いわ。たくさん見ておこうと思って」
ハナ「目が悪くなるからって見なかったのに」
ユニ「・・・。あぁ、もう大丈夫よ。デートしてくるんじゃなかったの?」

ハナは答えに困り、ごまかすように笑った。

ユニ「どうしたの?何かあった?」
ハナ「ううん。何でもないよ。お母さんは?何もなかった?
ユニ「うん。何もなかったわ」


ユニがニッコリ笑い、テレビに向き直ると、ハナがそっと母の手に自分の手を重ねる。
ユニは娘の手を見て思わず擦った。

ユニ「デートするような子がこんなカサカサの手でどうするの?顔は可愛いのに」

そう言ってテーブルの上のハンドローションに手を伸ばし、シュッと吹きかける。

ハナ「あ!やめてよ、お母さん」
ユニ「じっとしてて」

娘の手の甲に掛けたローションを、自分の手で丹念に塗りこみ、ユニは微笑んだ。

ハナ「お母さんがしてくれて嬉しいな」
ユニ「これからちゃんとローション塗って手入れするのよ。お母さんがいつまでしてあげられるか分からないでしょう?」
ハナ「・・・。」
ユニ「手をわずらわせて男の人を逃したりしちゃダメよ」
ハナ「どうしたの?もうすぐどこか行っちゃう人みたい」
ユニ「・・・。私の娘…手をつなぐ男の子はホントに幸せだわ」

ユニはじっと娘の手を見つめ、「出来たわ」と微笑んだ。

ハナ「(手の香りを嗅ぎ)すごくいい匂い!(?)の匂いでしょ」
ユニ「はいはい、ガーデナーだって分かってるわよ」
ハナ「わぁ、私もお母さんみたいに女らしくなった!ほら」

そう言って母に向かって手を広げて見せると、二人は楽しそうに笑い合った。
そのとき、ユニの手首につけた腕時計に、ハナの目がとまる。

ハナ「お母さん、ゼンマイ巻いてあげようか?」
ユニ「うん。そうしてくれる?」

ユニは腕時計を外し、「ほら」と娘に手渡した。

+-+-+-+

イナは腕時計のゼンマイを巻き、腕につけてそれを見つめた。
彼の誕生日の日、ユニがプレゼントしてくれたものだった。



ユニ「気に入りませんでしたか?ゼンマイを巻くのが面倒ではあるけど、一緒にいれば私が巻いてあげられるでしょう?だから…」

そう言って微笑んだユニは、きっともうこの腕時計のゼンマイを巻くことはないだろう。

#イナのシャツの色がものすごく素敵♪似合いますわぁ

+-+-+-+

自室のベッドに腰掛け、溜息をついたジュンは、携帯を取り出し、メールを打ち始めた。

送信先:ルルル
「お母さんと楽しく…」

ちょうどそこへメールの到着を告げる着信音がなった。

ジュン「?」

発信者:ルルル
「お母さんに親孝行しました?」

ふっと微笑んだジュンは、母を思い、顔を曇らせた。

+-+-+-+

ハナの携帯にメールが届いた。

発信者:ソ・ジュン
「お母さんと楽しい時間過ごしたか?」

+-+-+-+

そこに座ったままぼんやりと考えていたジュンは、電話のボタンを押し、耳に当てた。

ジュン(電話)「ハナ…」
ハナ(電話)「?」
ジュン「トゥル、セッ」

※ハナ、トゥル、セッ=1,2,3

ジュンがパチンと指を鳴らす。

ハナ「(笑)それ、何ですか?」
ジュン「会うたびにいつも他の人のこと考えてるだろ?それ、やめにしよう」

電話の向こうでハナが頷く。

ジュン「お母さんとどんなこと話したんだ?」
ハナ「ソ・ジュンさんは…お母さんに親切にしてあげました?…優しくしてあげてくださいね」
ジュン「いつか俺たち、自分たちの話だけしような」(←ここよく分からず
ハナ「・・・。お母さん、どんな方なの?」
ジュン「うちの母さん?…やり辛いけど、俺にとっては心の痛む人」
ハナ「・・・。」
ジュン「あぁ、お前と共通点も一つある」
ハナ「何?」
ジュン「庭が好きだったんだ」
ハナ「・・・。」
ジュン「小さい頃のことで一番好きなのは、母さんが庭にいるときのことなんだ」
ハナ「良かった」
ジュン「(笑)お母さんは?どんな方なんだ?」
ハナ「私にとっても…心の痛む人かな」
ジュン「これからは心を痛めたりしないように、俺が努力するから」
ハナ「…私も」

+-+-+-+

朝。

ソノがホワイトガーデンに出勤してくると、ちょうど庭に出てきたチョンソルが笑顔で出迎えた。

チョンソル「ソノ!」
ソノ「昨日はどうしてた?定休日だったから一人で辛かったろ」

チョンソルは笑って顔を横に振る。

チョンソル「朝から晩まで蟻一匹いなかったぞ。ちゃんと留守番してたからな」
ソノ「あぁ、お疲れ」

ソノが中へ入って行くと、チョンソルは途端に落ち着かない様子でオロオロし始めた。

チョンソル「あいつ、昨日俺が1日中いなかったの勘づいてるんじゃ?それにしても変だな。庭やキッチンの花にまで水遣ってくれたの、誰なんだ?(ハッ!)タニシ女房じゃないか?!」

※タニシ女房=韓国の昔話。貧しい百姓が嫁のいないことを嘆いていると、それを聞いていたタニシが(←実はタニシの姿にされた姫だそうな)、百姓が留守の間に嫁となってひっそり家事をしてくれて…というお話し。興味のある方は「우렁각시」で検索してくださいね。

ソノ「タニシ女房?」
チョンソル「えっ?違うって、タニシ女房だなんてそんなの!ちゃんと留守番してたって」
ソノ「・・・。」
チョンソル「おっ?ところで、ソノ、お前雰囲気が全然違うけど?」
ソノ「あ、まぁ…」

そこへ中から助手が出てきた。

助手「(ソノを見て)髪型変えたんですね」
ソノ「・・・。」



何となく浮かない顔のソノ。
助手に続いて出てきたカフェ店員が声を掛けた。

店員「先生、また失恋したんですか」
チョンソル「?!」
ソノ「失恋なんて」
助手「失恋するたびに髪型変えるでしょ?もう、そんなこと僕だって知ってますよ」
ソノ「・・・。」
チョンソル「そうなのか?」
助手「けど、今回はかなりキツそうですね。すっかり雰囲気変わっちゃって」
ソノ「(わざと丁寧に)そんなことありませんから。冗談やめて入れよ」

二人は中に入りながら呟いた。

助手「…冗談じゃないんだけどな」
店員「絶対図星なのに」

二人に代わって、チョンソルが彼に駆け寄った。

チョンソル「ホントか?!失恋したのか?諦めちまったのか?」
ソノ「違うって」
チョンソル「(ソノの腕をバンと叩き)ジュンもあの子も死ぬほど愛しあってんだ。どうしようもないだろ」
ソノ「・・・。」
チョンソル「お前も、お前の妹も諦めて他の人探したほうがいいって。(ぷっと笑い)お前の妹は特に、すぐ近くを探した方がいいぞ」

「ひょっとして!」…ふと声がして中を見ると、助手がチョンソルを睨みつけていた。

チョンソル「!」
助手「ミホさんのこと好きなんですか?」
チョンソル「?」

厳しい助手の顔が俄に曇っていく。
泣きそうな顔になると、彼は柱をコンと小突き、その場を立ち去った。

チョンソル「ビックリすんだろ!いきなりまた出て来てよ!…あいつどうしたんだ?もしかして!ミホのこと!」

騒がしい面々がいなくなると、一人になったソノはふと庭に視線を戻した。
ちょうどジュンが階段を上がってきたところだった。

ソノ「ジュン」
ジュン「お父さんに話したか?」
ソノ「(頷き)話しておいた。父さん、ショックを受けてたよ。失明だなんて本当なのか?」
ジュン「…うちの父さんには」

ソノは何度も頷いた。

ソノ「秘密にしてくれって頼んだよ。分かったって言ってた」
ジュン「…ありがとうな」
ソノ「・・・。」
ジュン「・・・。」


+-+-+-+

ユニは樹の上で作業している職人に指示を出していた。

ユニ「もうちょっとこっちへ…」

そう言い掛けた瞬間、眩暈が彼女を襲う。
ふらりとよろめいた彼女が、樹を支えていた支柱に思わず手を掛けると、
大きな支柱はいとも簡単に外れて転がった。
そばで作業をしていた職人がそれを避けようとひっくり返った。

皆が慌てて駆け寄る。

ユニ「大丈夫ですか?」
倒れた職人「大丈夫ですよ。心配なさらないでください」
ユニ「すみません」
他の職人「大事になるところだったな!」
ユニ「お怪我はないですよね?」

+-+-+-+

ユニは一人、木陰のベンチに座り込んでいた。
自分の目のせいで、他の人に大怪我をさせるところだった。
自分が不便なだけでは済まされない。状況はもっと早急であり、深刻だったのだ。

壁にそっと手を添えながら、ゆっくりと温室横の階段を下りる。

その姿を下で見守っていたのは、ドンウクだ。

ユニ「!」

彼は切ない表情で、驚く彼女を見つめ返した。

+-+-+-+

二人は緑の中のカフェに来ていた。
先に口を開いたドンウクの口調は、どこまでも穏やかだ。

ドンウク「ユニさん、酷いじゃありませんか。具合が悪いなら僕に相談してくれればいいのに」
ユニ「ソ・ジュンさんに聞いたんですね」
ドンウク「子どもたちのこともそうだし、これまでずいぶん辛かったでしょうね」
ユニ「・・・。」
ドンウク「昔の友だちだと言っても、僕たちはたいして役に立たない。それでも、ここまで知らずにいたなんて」
ユニ「そんなことありません」
ドンウク「幸いうちの病院の眼科はとても有名なんです。一緒に行って、もう一度検査を受けてみよう」
ユニ「・・・。」
ドンウク「ユニさん、僕の頼みです。このくらいの頼みは聞いてくれてもいいでしょう?」

じっと目を伏せていたユニが、まっすぐ視線を上げた。

+-+-+-+

ユニの目に強いライトが当たる。

ドンウクとソノがそばで見守る中、さっそく眼科医による再検査が始まった。

ひと通り検査を終え、ソノが廊下に出てくると、じっと一人で座って待っているジュンの姿があった。
彼はソノがやって来るのに気づくと、すぐに立ち上がり、真剣な眼差しで彼を見つめた。

ジュン「どんな具合なんだ?ずいぶん悪いのか?」
ソノ「…失明は避けられそうにない」

ジュンは絶望に思わず目を閉じ、頭を垂れた。

ソノ「けど、少し遅らせることは出来るから」
ジュン「・・・。」
ソノ「ハナさんも悲しむだろうに」
ジュン「・・・。」
ソノ「とにかく、外国も調べて、他の方法を探してみよう」

ジュンは顔を上げ、かろうじて頷いた。

+-+-+-+

看護師がユニに目薬を差した。

看護師「薬の作用で暫くの間視界がぼやけるかもしれません。驚かないでくださいね」

廊下に出てくると、ぼんやりとした景色の向こうに、待っている人々の姿が映った。
手前に座っていた人が自分の方を振り返り、立ち上がる。
ユニは壁に手をつき、ゆっくりと歩き始めた。
数歩歩いたところで急に右側が開け、壁がなくなると、戸惑った彼女の手を、誰かがサッと取った。

ユニ「?」

顔を上げ、その人に視線を向けてみる。
ぼやけていて、姿ははっきり見えなかった。

ユニ「ソ・ジュンさん?」
ジュン「はい。僕です」



ジュンは大切な人の母に付き添い、廊下を一緒に歩き出した。

+-+-+-+

二人は病院の中庭に並んで座っていた。

ジュン「勝手なことをしてすみません。きちんとした治療を受けてくださればいいと…そう思ったんです」
ユニ「わかります。ありがとう」
ジュン「それから、ハナにもお話しになったほうがいいと思います」
ユニ「・・・。」
ジュン「もうハナも知るべきだと思うんです。それに、ハナに対してこれ以上偽りたくありません」
ユニ「もうしばらく…娘が笑っている姿だけ見ていたいんだけれど…」
ジュン「・・・。」
ユニ「少しずつ目が悪くなって、結局失明してしまうのは避けられないでしょう?少し遅くなるだけ」
ジュン「・・・。」
ユニ「自分勝手かもしれないけれど、ハナが私の目のことを知って悲しむのを見るより、笑っている顔をもう少し見ていたいの」
ジュン「・・・。」



ユニがジュンを振り返った。

ユニ「笑っている顔を憶えていたいんだけど…いけないかしら」
ジュン「一人で耐えているのは寂しいでしょう?」
ユニ「・・・。」

+-+-+-+

なかなか絵が描けずにいるイナは、真っ白なカンバスの横でエージェントに展示会の日程をキャンセルしてくれと電話を入れていた。

ユニと別れ、じっと車の中で考えていたジュンは、携帯電話を見つめた。
画面には父親の連絡先。

光を失うユニを支えて生きていけるのは、やはり父だった。
携帯電話を持った指先が、通話ボタンの上でためらっていた。
< +-+-+-+


ここで一旦区切ります。

どんだけー!っちゅーくらいソフト攻めですなぁ


20 件のコメント:

  1. アンニョン yujina〜♪さん
    ゆっくり見てられますねー‼
    超日本サービス路線で‼
    実は、アマーイのがすきなんだなー ワタシ^^
    今日は、ひとつ質問!
    イーチャナーという言葉がありますが、
    文末につけることが、多いですが
    文中にあるときもある。
    どんなふうに訳せばいいのですか?

    返信削除
    返信
    1. さっそくありがとうございます^^

      >イーチャナー

      文中というのはケースによると思うのですが、おっしゃっているのは文頭につく場合かな?
      何かを話し始める時に、「イッチャナ」と言ってから話し始めることがよくあります。
      「イッチ」とか「イッチャナヨ」のときも。

      これは、話を始める時のクッションのようなものだと考えて下さい。
      「あのね」「あのさ」と訳すのが自然だと思います。

      そういうケースじゃない場合は、もう少し詳しく聞かせてくださいね。

      削除
    2. ありがとうございます。発信してから、文頭やや!と気づきました。どうも話し方がラフなんでそうなのかなと思ってました。スッキリ!
      これの入ってる話し方がすきなんですよ^^
      私、一体何回yjinaさんの文とクリップのダウンロードとのあいだを行ったり来たりしていることか‼‼ わかる楽しみとあなたの文章の美しさを100%たのしんでいます‼
      ありがとうございます.♪

      削除
  2. いつもありがとうございます。
    字幕で観るよりリアルに感じられ、なお一層愛の雨の良さに感動してます。本当に良いドラマに最高の翻訳で感謝しています。

    返信削除
  3. ariari2012年6月24日 15:29

    18話、ありがとうございます。楽しみに待っていました。
    ハナは本当に心優しくて、でも、強くて、いい娘ですよね。へジョンに言われたことに傷ついていても、ジュンに「お母さんに良くしてあげてね」と言えるなんて・・・。
    「ラブレイン」は何度、見ても飽きないドラマだと思います。楽しく、ハングルの勉強が出来ています。yujinaさんの翻訳を読んでから、見直していると、ハングルで聞いていても意味がわかってくるから不思議です。ただ、もしかすると、yujinaさんの日本語を丸覚えしているだけかもしれませんが・・・

    また、よろしくお願いします。

    返信削除
  4. 18話の翻訳ありがとうございました。

    視聴してからしばらく経ちますが、yujinaさんの訳を読んでいると、
    今回も頭の中に画像が蘇ってきました。
    バスを待っている2人のやりとり、素敵ですね!

    私も質問して、いいでしょうか?
    韓国語の初心者なので、変な質問なのですが・・・。
    よく、語尾に「クドゥン(コドゥン)」と聞こえて、
    特にソ・ジュンが言うと、意味も分からず、その声にキュン♥となってしまうのです。
    どういう意味で使われているのでしょうか?
    お暇なときに、ご回答お願いします_(._.)_

    返信削除
    返信
    1. ありがとうございます^^

      >「クドゥン(コドゥン)」

      よくぞ気に入ってくださいました。
      「~コドゥン」は韓国語学習仲間の中では『使いこなしたい憧れの語尾ナンバーワン』ですよ(笑)
      いいですよね~。大好きです、この語尾。

      これは、前に述べたことの前提になるようなことを言う時に使います。

      例文:
      난 사랑비 보고 있어. 장근석씨 아주 좋아하거든.
      ナン サランピ ボゴ イッソ. チャングンソクシ アジュ チョアハゴドゥン
      私、サランピ見てるの。チャン・グンソクさんのこととっても好きだから。

      後の文章は前の文章の前提になってますよね。
      こういうとき、「~だから」というニュアンスで「~コドゥン」を使います。

      削除
    2. yujinaさん
      お忙しいのに、こんなに早くお返事くださって、
      ありがとうございました。
      例文まで載せてくださって、なるほど!と理解できました。

      サランビ、20話までどうぞよろしくお願いします。

      削除
  5. yujinaさん、18話-前半、ありがとうございます。

    ハナがヘ・ジョンに拒否されながらも
    お母さんに優しくしてあげて・・・
    と言う切ない気持ちと、暖かい気持ちが嬉しかったです。

    そして、ジュンとハナの電話の内容も良く分かりました!!!
    いつも、二人のことだけ考えようとしているのに
    お互いの家族のことを思いやる会話が本当にやるせない気持ちです。

    ソノの髪型が変わった理由も、やっぱり失恋だったんですね!
    あの、クリクリパーマが大好きだったのにと思っていました。
    そして、今回も助手君やチョンソル・店員さんがいい味出してますね。

    やはり、Love Rainには、yujinaさんの翻訳は欠かせません!
    あと少しですが、残りの翻訳も期待しています。
    ヨロシクお願いいたします!!!

    返信削除
  6. yujinaさん
    ありがとうございます!
    やはり細かいとこは、わかっていませんでした...
    映像を思い出せる訳...訳を読んで映像がうかぶ...
    本当に感謝です!☆⌒(*^▽゚)v

    返信削除
  7. こんばんは!

    続き、楽しみにお待ちしていました。
    本当に、またもうひとつの
    小説版のような楽しみです。

    ところでまた
    変換まちがいに気付いてしまいました。

    歌詞のところ
    愛する自身→自信
    ですよね。
    すみません。決してワザワザ探している訳ではありませんのですが
    目に飛び込んできてしまい。

    でも、自分で読み返すと、なかなかみつからないものですよね。

    それにしてもハナちゃん
    本当にいい子ですね。
    北風と太陽の、太陽。
    だから、まわりの人の鎧が
    だんだんとけていくのですね。

    返信削除
    返信
    1. いつもありがとうございます。

      変換間違いのご指摘、助かります。
      さっそく訂正しました。
      おっしゃるとおり、自分では見落としてしまうので、お気づきの点がありましたら、またぜひ教えてくださいね。

      削除
  8. ソノの髪型の変化には意味があったのですね。ジュンとハナも変えたから、このタイミングで変えるなら、最後には それから何年後 みたいな流れはないかと予想したりもしました(笑)

    私も勉強したいなら、みなさんのように疑問を持ったり、聞き取ろうとしたりしなければならないですね!

    ヒアリングも頑張りながら、ドラマを楽しもうと思います!

    返信削除
  9. こんばんは(⌒‐⌒)

    今日、ラブレイン10話目の放送直前に見つけて、「こんな事言ってたの?」と良くわかりました。

    特に、ジュンとハナがお互いオンマを思いやる所がいいですねぇ~ρ( ^o^)b_♪♪

    後、ソノとチャンモンの甥っ子の会話、タニシの女房は、韓国にはそんな昔話があるんどすね?
    知りませんでした。

    それと、十話の放送を見ていて、読み返してたんですが、ジュンとハナのメールのやり取りが面白かったです。

    しかし、ジュンの携帯のハナの名前は、「ルルル」だったんですね?
    知りませんでした。f(^_^)

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  10. Yujina様 いつも楽しく拝読しています。
    ジュンがユニに丁寧語で話すのがとても素敵です。
    言葉はあまりわからなくても丁寧なニュアンスは伝わるなんて演技が流石です。
    歌の訳までつけてくださりありがとうございます。あんなに切ない詩だったなんて…(涙)
    いつもやんちゃなジュンがYujina様の言うとおりどんだけソフトなの!!
    ま、結局は素敵なんですけど…
    いつもありがとうございます。

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  11. yujinaさん、初めまして^^

    実は、花より男子の頃からのyujinaさんのファンで、ずっと読ませていただいております。
    読むたびに、感謝のコメントをと思っていたのですが、なかなか勇気を出せなくて。。

    でも、今回はやっと18話になって勇気を振り絞りコメントさせていただきます^^

    と、言いますのは、‘거든’についてyujinaさんが質問に答えられていたからなんです!
    私がこちらにたどり着いた頃に、yujinaさんが「거든を上手に使いこなせるようになりたくて、韓国語の勉強を始めました(←うろ覚えなので間違っていたらすみませんm(_ _)m)」と書かれていたのを読んで、それに感動して私も韓国語の勉強を始めたんです^^
    もっとも、私は勉強が足りずにちっとも進歩していませんが^^;

    そして、もうひとつコメントしようと思っていたことが…
    実は、私は今まで、グンソクくんを特に好きではなかったんです。
    イケメンもメリも今ひとつ、グンソクくんには惹かれませんでした。
    グンソクくんは、快刀ホンギルドンの若君が最高だとずっと思っていたんです。

    でも、このサランピで、遂に、グンソクくんに嵌ってしまいました^^
    ユナちゃんも実は苦手だったんですが^^;このドラマで大好きになりました〜
    以前は演技が下手だと思っていたんですが(ファンの方、ホントゴメンナサイ)サランピのハナは最高に可愛くて、演技も素晴らしいと思います^^

    先ず、70年代に嵌り、現代になったらどうかな?と思っていたのですが、現代にももっと夢中になってしまいました!
    映像が美しくて、私のツボにピッタリだったようです^^

    私はKNTVでも楽しんでいますが、みなさんがおっしゃっているように、yujinaさんの訳の方が本当に自然だとつくづく感じています。
    お仕事をされながらの作業は、私たちが想像するよりもとても大変だと思いますが、ゆっくりで構いませんので是非、最後まで書いてくださるととても嬉しいです♪
    本当に本当に、ありがとうございます☆

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  12. 最後らへんがもう、涙が止まらないほど、悲しく、切なく、それに感動もしました。
    あぁ~、続きがきになりますね^^ 18vol.2をとても楽しみにお待ちしております!
    無理せずに、ゆっくりでいいので、最後まで書いてくれたら嬉しいです。
    本当に感謝しています^^ ありがとうございます。

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  13. Yujinaさん いつもありがとうございます。影響されて
    韓国語講座に通い始めました。1ヶ月でハングルが読める
    ようになり、新大久保散歩も楽しくなりました。ティパ
    が歌う「クデニカヨ」もドンと心に響くようになり、4話
    見返して、また泣きました。(笑)文章はセンスなので
    Yujinaさんのようには無理でも、なんとかドラマが分かる
    ようになりたいです。スローテンポでイライラさせられる
    サランピ、実はヒアリングには最高の教材ですね。
      Yujinaッシ ファイティ~ン!
    (そのうちハングルで打てるよう頑張ります!)

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  14. ユジナさんいつも解説ありがとうございます。
    解りやすく小説のようで、切ないですが、映像が蘇ります。
    20話まで宜しくお願いします。

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  15. お久しぶりです。

    〜 거든についての講義ありがとうございます♡
    勉強になります。
    私はゆっくり韓国語を勉強しているので、なかなか口語、しかも同じ目線の会話に辿り着かなくて。韓国語の優しい語感が好きなのですが、
    こういった末尾の会話を楽しむにはまだ時間がかかりそうです。

    좋아하거든…って、素敵ですね。 좋아좋아‼

    地上波が始まって復習中です。かなり編集が違いますが。
    私もゆっくりですが、いつかYujinaさんのように韓国語の優しい口語を感じられるように、
    頑張りますね。 目標です。

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