LOVERAIN、いよいよ最終話です。
お互いへの愛を胸に、親たち、そして自分たちが皆幸せになれる道を求め、一旦離れ離れになる道を選択した二人。
二人を包む夕日は、暮れていく悲しみだけではなく、その先に希望のある温かい光にも感じられます。
イナとユニ、そして、ジュンとハナ、彼らの愛の行く先を見届けましょう。
さっそくどうぞ。
+-+-+-+
ベンチに座り、イナとユニはしばらく黙って懐かしい風景を眺めていた。
先に口を開いたのはユニだ。
ユニ「いざ手術を受けると思うと、怖くなったんでしょうね」
イナ「・・・。」
ユニ「見ておきたいものが思い浮かんで、ますます怖くなったんです」
イナは小さく何度も頷いた。
ユニ「こうやってみると…いいものですね」
ユニの目に切ない涙が滲む。
ユニ「全部…憶えておかなきゃいけないんだけど」
イナ「僕はずっと何かを眺めて生きてきた人間です」
ユニ「・・・。」
イナ「何かを見つめて、ないものねだりをして来た…」
ユニ「・・・。」
イナ「他には何も求めません。君の隣で僕の出来ることが出来れば、それでいいんです」
ユニがゆっくりとイナの横顔を振り返った。
イナ「もし…万が一、君が視力を失ったとしたら、そのときは僕が君の目になってあげるわけにはいかないだろうか」
ユニ「・・・。」
イナ「君の見たいものを、僕の目で代わりに見てあげたい。そうやってずっと、君の隣にいてはいけないだろうか」
イナを見つめる目が再び涙で潤み、彼女は思わず俯いた。
ユニ「そんなこと…できないわ」
イナ「・・・。」
ユニ「私にそんなこと…できるはずがないでしょう?」
イナの目がゆっくりと力を失っていく。
前へ向き直ると、イナとは反対側のユニの頬を涙がキラリとつたった。
+-+-+-+
湖畔は青くその色を変えていた。
髪をそっと揺らす微かな風が、二人の静かな決意を象徴しているようだ。
ハナ「時が来たら、そのときは必ず行きますね」
ジュン「…待ってる」
並んでボンネットにもたれていた二人は、お互いの目を見つめ合った。
ハナ「そんな日が来るかな?」
それには答えず、ジュンは黙って目を伏せる。
ジュン「そろそろ帰ろう」
運転席に向かおうと背を向けたジュンの腕を、ハナがたまらず掴んだ。
振り返ったジュンに、首を横に振ると、ハナは声を震わせた。
ハナ「…帰らない」
ジュン「・・・。」
ハナ「別れたくないの」
ジュン「・・・。」
ハナ「状況なんか考えないで、ただ一緒にいてほしい…。それじゃ駄目?」
ジュンは何も言わず彼女の方に向き直ると、風に乱れた彼女の前髪をそっとなぞった。
ジュン「別れるんじゃない。俺たち、また会えるから」
目を潤ませ、ジュンを見つめていたハナの悲しい目は、ゆっくりと力を取り戻した。
+-+-+-+
食事の皿を家の脇のテーブルセットへと運んでくると、ユニはジュンが訪ねてきたのに気づき、微笑んだ。
ユニ「いらっしゃい」
ジュン「招待してくださってありがとうございます」
差し出したのは、ユニの大好きなかすみ草の大きな花束だ。
彼女は嬉しそうにそれを受け取った。
ユニ「ありがとう」
母に優しい視線を送るジュンの隣で、ハナが口をとがらせた。
ハナ「私には?」
ジュン「お前の好きな花、知らないんだけど」
ハナ「・・・。」
ユニが思わず声を出して笑う。
ユニ「ハナは公平な子だから、花だって全部平等に好きなんですよ」
楽しそうにそう言って、ユニは二人にもう一度微笑みかけた。
ユニ「花瓶に活けてきますね」
ユニが家の中へと姿を消すと、ハナはまた膨れっ面になり、ジュンを恨めしそうに睨んだ。
ジュン「俺、もともと女の子に花贈ったりしないから」
ハナ「そうでしょうとも」
そっぽを向くハナの横で、ジュンは椅子の上の荷物に手を伸ばした。
ジュン「ほら」
ハナの目の前に差し出されたのは、色とりどりの小さな花束。
ハナ「…!」
彼女は声も出せずに、それを受け取った。
ジュン「キッチンガーデンでお前が育ててたハーブと花」
ハナ「・・・。」
その愛らしい花びらをハナは黙って指で撫でた。
何も言わないハナに、ジュンが不思議そうに彼女の顔を覗く。
ジュン「…どうした?気に入らないか?」
ハナが初めて嬉しそうに顔を輝かせる。
ハナ「ううん。こっちのほうが嬉しい。これ、一つ一つ私のことを考えながら摘んだんでしょ?」
ジュン「いや?とっ散らかってたから片づけただけ」
ハナ「(笑)ありがとう」
笑顔で花を眺めるハナを、ジュンは満足気に見つめた。
+-+-+-+
テーブルの上には、大きな花束と小さな花束が仲良く並んだ。
その脇には美味しそうな料理がすっかり整っている。
ユニ「どうぞ座って。(ハナ)あなたも座りなさい」
タイミングを計っていたかのように、ハナが口を開いた。
ハナ「お母さん。あとお一人、もうすぐいらっしゃるはずなの」
ユニ「?」
ハナ「教授よ」
ユニは驚いてジュンに視線を移した。
ジュン「あ…。僕も知ってます。僕が頼んだんです。父にしてあげたいことがあって」
ユニ「してあげたいこと?」
ジュンは優しい眼差しで微笑んだ。
そこへ、人の気配を感じ、彼らが振り返った先にイナの姿が現れる。
イナが最初に視線を合わせたのはジュンだ。
イナ「ジュンも来ていたんだな」
父の言葉にジュンが黙って頭を下げると、ユニは複雑な表情で俯いた。
+-+-+-+
野菜がふんだんに使われた素朴な料理が、穏やかな食卓に漂う空気をより優しくしていた。
ジュン「手術はまたお受けになるんですよね?」
ユニ「・・・。」
イナ「今月中にもう一度手術の日を決めるとドンウクが言ってた」
ハナ「良かった」
#へっ?ってことは、ユニが手術をドタキャンして、数日経ったってことでOK?^^;
ジュンとハナがホッとして微笑んだ。
ユニ「手術、少し伸ばそうかと思うんです」
イナ「?」
ハナ「お母さん。手術を伸ばすなんて!」
ユニ「(微笑)あれこれと考えたいことがあるのよ。受けないって言ってるわけじゃないから心配しないで」
ハナ「・・・。」
ユニ「(イナに)アメリカに行って来られればと思ったんです」
イナ「?」
ユニ「叔父や家族たちに会いたくて」
ハナの方へ向き直ると、ユニはもう一度同じ言葉を繰り返した。
ユニ「手術はそのあと受けますね」
イナ「それならそうするといい。でも、一人で行かせるのは安心できないな」
ユニ「ハナと一緒に行こうと思うんです」
ハナ「・・・。」
イナ「それもいいね」
ハナ「私もそれでいいわ、お母さん」
ユニ「・・・。」
ハナはふと思い出したように、イナに笑顔を向けた。
ハナ「教授、今日はソ・ジュンさんが写真を撮ってくれるって」
イナ「?」
ジュン「(ユニに)父がお二人の写真を撮ってほしいっておっしゃったことがあるんです。でも、僕は今日しか時間が取れそうになくて」
ユニは思わずイナの横顔を振り返った。
イナは喜びを隠そうともせず、息子に笑いかけた。
イナ「ありがとう」
ユニ「・・・。」
ジュン「今から何枚か撮りますね」
ジュンが脇に用意していたカメラに手を伸ばすと、ユニが慌てて声を掛けた。
ユニ「全部食べてからにしましょう」
ジュン「(微笑)今だって自然でとてもいいですよ」
ジュンが立ち上がり、食べている3人にカメラを向けると、照れくさい笑いが場を包んだ。
ハナ「お母さん、笑ってよ」
娘の指導にユニがぎこちなく笑い、つられてイナも笑う。
そこへ軽快なシャッター音が響いた。
ジュン「楽にしてくださればいいですよ」
ジュンは明るい彼らの表情につぎつぎとシャッターを切った。
+-+-+-+
キッチンでコーヒーの用意をしているユニの元へ、イナがやって来た。
ダイニングの椅子の上に置いてあった鞄を、イナがひょいと持ち上げる。
ユニ「お帰りですか?」
イナ「昼から講義があるんです。また寄りますから」
「それから…」と、イナは鞄のファスナーを開く。
彼は中に入れてあった黒い小箱を取り出し、二人の間のテーブルに置いた。
ユニ「何ですか?」
イナ「結婚の準備をしていたとき、注文してあったんです。今になってようやく手に入ったんですよ」
ユニが蓋を開けてみると、そこに繊細なペンダントが顔を出した。
感激して顔を上げると、ユニはもう一度ペンダントに視線を戻した。
ユニ「傘の形なんですね」
イナ「僕たちの思い出を込めたんです」
ユニ「・・・。」
ユニはそっと蓋を閉めると、箱を元の場所に戻した。
ユニ「もうこういうものは受け取れません」
イナ「…なぜです?」
ユニ「・・・。」
イナ「友人の贈るプレゼントも受け取れませんか?」
ユニ「こんなものを贈るのが友人だなんて…」
イナ「・・・。」
ユニ「友人にさえなれない関係なのに、私には受け取りようがありません」
イナの口からやるせない溜息が漏れた。
イナ「僕たちは友人にさえなれない関係ですか?」
ユニ「・・・。」
イナ「君のものだから君の好きにするといい。これで帰ります。また話しましょう」
ペンダントの箱を残し、イナは足早にユニの前を去った。
ふいに静けさが訪れる。
ユニはテーブルの上に置かれたままの箱をじっと見つめた。
+-+-+-+
外へ出てみたユニは、写真をめぐってじゃれ合うジュンとハナの微笑ましい姿に、そのまま声もかけず家の中へ戻った。
扉を閉めると、外にいる二人の声がまだ聞こえてくる。
ジュン「向こうで落ち込んだ時に見るんだから」
ハナ「いつ行くの?」
ジュン「来月」
気になる会話に、ユニが驚いて振り返る。
ハナ「そんなに早く?」
ジュン「まぁな。NYでよっぽど必要とされてるらしい」
ハナ「それじゃ、それまで毎日毎日会わなきゃ」
ジュン「その前に俺たち旅行にでも行くか?」
ハナ「(うんうんと頷き)行きましょ」
ジュンが驚いた表情を浮かべた。
ジュン「どういう風の吹き回しだ?前はあんなに嫌がってたのにさ」
ハナ「(呆れ笑い)せっかく行ってあげようと思ったのに」
ジュン「分かったって。どこ行く?」
ハナ「どこにする?」
ジュン「行きたいとこないのか?」
…何でもないように明るく話すジュンとハナの声が、ユニの頭の中をめぐった。
+-+-+-+
夜。
二人きりになると、ユニは娘をダイニングへ呼んだ。
ハナ「どうしたの?お母さん」
ユニは注意深く口を開く。
ユニ「ソ・ジュンさん、NYへ行くの?」
ハナ「!…うん。ソ・ジュンさんが留学したとき、アシスタントで働いてたとっても有名なスタジオなんだって。そこに呼ばれたみたい。はぁ、自慢ばかりなんだから」
ユニ「あなたは?」
ハナ「私は…。私は行くわけないでしょう?」
ユニ「私のために?」
ハナ「(微笑)私はお母さんのそばにいたいの」
ユニ「・・・。私たちのせいなのね」
ハナ「・・・。」
ユニ「いいえ、私の目のせいね」
ハナ「・・・。」
ユニ「それでソ・ジュンさんはNYへ行って、二人とも別れることにしたの?」
ハナ「別れるんじゃないわ。だから、私たちのために悲しまないで」
ユニ「・・・。」
ハナ「今はここでみんなが幸せになることはできないから、少しの間離れるだけよ」
ユニ「・・・。」
ハナ「誰もそばにいないお母さんのそばを離れるのは心配だから、今は一緒に行かないだけ」
ユニ「・・・。」
ハナ「お母さんに幸せでいてほしいの。そうすれば、私たちだって幸せになれるはずよ。心配しないで」
穏やかに話す娘に何も言えず、ユニはただ俯いた。
+-+-+-+
その日の夜は、ユニにとって長い夜となった。
寝室に戻ると、彼女はイナが残していった小箱をもう一度開いてみる。
自分の幸せ、自分の幸せを心から願う娘の幸せ。そして、娘自身の幸せ。
イナの愛のこもった傘の形のペンダントトップを見つめながら、彼女の胸の中には、いろいろな思いが浮かんでは消え、消えてはまた浮かぶ。
ペンダントを手に取り、首に掛けると、彼女は鏡に写る自分の姿を眺めた。
「もしも君が視力を失ったら、僕が君の目になってあげるわけにはいかないだろうか」
「今はここでみんなが幸せになることはできないから、少しの間離れるだけよ」
「誰もそばにいないお母さんのそばを離れるのは心配だから、今は一緒に行かないだけ」
自分を思う人々の言葉が蘇り、彼女の心をふたたび揺さぶった。
+-+-+-+
大急ぎで植物園を駆け抜けたハナは、リゾート本館の前までやって来てタクシーに飛び乗った。
ハナ「空港まで!」
すぐに発進したタクシーの中で、彼女は手に握りしめていた黄色い便箋を開いた。
私の娘 ハナへ
お母さん、しばらくアメリカの伯父さん(ハナにとってはお祖父さん)のところへ行こうと思うの。
できればそこで手術も受けたいと思ってるわ。
イナさんにも、お母さんの代わりによくお話ししてちょうだい。
前にもこうやって一人で発ってしまったことがあるの。
またこんなことをしてごめんなさい…そう伝えてね。
講義を終え、たくさんの学生たちに混じって講義室を出てきたイナは、そこで電話が鳴ったのに気づき、立ち止まった。
イナ「・・・。」
知らせを聞いたイナは、何も言えず立ち尽くす。
+-+-+-+
空港に到着したハナは、出国ゲート前に駆け寄り、夢中で母の姿を探した。
続々とゲートを入っていく人々の中に、ユニの姿は見つからない。
忙しく行き来していたハナの目は、ふいに視界に入った見慣れた人影にその動きを止めた。
イナが出国ゲートを見つめて立っていた。
ハナ「・・・。」
彼はハナの姿に気づくと、静かに口を開く。
イナ「お母さんはもう発ったんだ」
ハナ「!」
お母さんはこう思うの。
初めは、あなたたちを通して私たちが再会したんだと思っていたわ。
けれど、あなたたちが出会うために、私たちが30年前に出会ったんじゃないかしら…。
今はそう考えるようになったの。
二人の幸せを願ってるわ。
愛しい私の娘… また会いましょう。
ハナが家に帰ってくると、知らせを受けて待っていたジュンが彼女をそっと抱きしめた。
彼女の悲しみを、半分自分に預かろうとしているように、ただ静かに…。
その腕の中で、彼女は黙って目を閉じた。
+-+-+-+
ヘジョンの元をイナが訪れた。
思いがけない訪問に驚いた表情を見せたヘジョンは、すぐさま落ち着きを取り戻し、冷ややかな一声を発した。
ヘジョン「何の用です?」
イナ「・・・。」
ヘジョン「ユニのために私を責め立てに来たのならやめておくことね」
イナ「・・・。」
ヘジョン「だからって、ジュンやあの娘に関する私の考えは変わらないわ」
イナ「・・・。」
ヘジョン「変わらないと言ってるの」
イナ「そのために来たんじゃないんだ」
ヘジョン「?…それなら、何のために?」
イナ「君に…別れのあいさつをしに来た」
ヘジョン「!」
ヘジョンは思わず立ち上がった。
ヘジョン「全部捨てていくって言うの?仕事も地位も何もかも捨てて?」
イナ「私が持っているものはたいして多くない。捨てるものなんてないんだ。ただ…ヘジョン、君のことだけが心配だ」
ヘジョン「誰が誰のことを心配ですって?」
イナ「・・・。」
ヘジョン「最後の最後までこんな調子のくせに!」
イナ「…ごめん」
ヘジョン「!」
「ごめん」…イナの柔らかい言葉に、ヘジョンの中で張り詰めていたものが一気に流れだした。
イナ「すまない」
瞳がみるみるうちに潤み、彼女は思わずイナから視線を逸らした。
全身の力が抜けてしまったように座り込むと、溢れだした涙が次々と頬をつたった。
イナ「…ごめん」
+-+-+-+
ジュンが父の家へやって来ると、父は書斎で本の整理をしているところだった。
分類され、紐でくくられた本が、いくつもの小さな山を作っていた。
イナ「よく来たな」
深刻な顔で立っている息子を前に、イナは周りに積み上げた本を見渡して笑ってみせた。
イナ「散らかってるだろう?」
ジュン「結局…行かれるんですね」
イナはまっすぐに息子を見つめ返した。
+-+-+-+
父と息子は少し距離を置いてソファに座っていた。
ジュンは硬い表情で目の前の空間を凝視している。
イナ「母さんを頼む」
ジュンがゆっくりと父を振り返った。
イナ「人は誰もが心のなかに深い闇を抱いて生きているような気がするんだ」
ジュン「・・・。」
イナ「母さんの心の闇を拭ってやれずに、そのせいでお前にずいぶん辛い思いをさせたな」
ジュン「・・・。」
イナ「すまなかった。私が悪かったんだ」
率直に詫びる父の言葉を、ジュンは悲しげな目で受け止めた。
イナ「ユニさんの元へ行ったとしても、私たちはもう恋人になれるわけじゃない」
ジュン「・・・。」
イナ「だからお前たちには、我々のことは気にせずにつき合ってほしいんだ」
イナの目がさらに優しさを増した。
イナ「お前に渡すものがある」
丁寧に紙で包装された包みを持って来ると、イナはそれをジュンのそばに置いた。
イナ「プレゼントだ」
ジュン「・・・。僕もお渡しするものがあるんです」
ジュンは立ち上がると、白い封筒を父に差し出した。
受け取ったイナは、嬉しそうにその封筒を眺める。
イナ「お前からプレゼントとは嬉しいなぁ」
ジュン「…父さん」
イナ「・・・。」
ジュン「これまで父さんをずっと恨んできました」
イナ「…あぁ。すまなかった」
ジュン「それから、とても愛していたし…とても恋しく思っていました」
父と息子の間を確かにつないでいた絆は、長年それを覆い隠してきた悲しみから解き放たれ、
再び鮮明に二人の間を流れ始めた。
息子のまっすぐな視線を、満足気に受け止めると、イナは静かに右手を差し出した。
ジュンがその手を握ると、イナはさらに強く強く握り返した。
それ以上、父子の間に言葉は必要なかった。
+-+-+-+
ジュンが帰り、一人になると、イナは息子の持って来た封筒を開いた。
中から現れたのは、大きく現像された自分とユニの写真だ。
1枚1枚、ゆっくりとめくりながら、イナの表情が和らいでいく。
幸せそうに笑っている二人の姿が、そこにあった。
今やイナの心は計り知れない愛でいっぱいに満たされていた。
+-+-+-+
ホワイトガーデンに戻り、イナから渡された包みを開けたジュンは驚いて息を呑んだ。
そこに描かれていたのは、イナが二人の関係に初めて気づいた日、イナが見た二人の姿だった。
そっと、絵の中のハナの顔をなぞってみる。
父がどんな思いでこの絵を描いたのか…。物言わぬ絵が語る父の思いに、ジュンの胸はせつなく鳴った。
+-+-+-+
ハナの家で、ジュンとハナは何も言わずソファに座っていた。
目の前には、イナが30年前に描いたユニの絵。
そして、その隣には30年の時を経て描かれた、ジュンとハナの絵が並んでいた。
絵を眺める二人の間に、時を結んだ二つの愛が温かく流れる。
ハナ「教授、もう出発されたんですか?」
ジュン「…うん」
ハナ「・・・。」
ジュン「学校が休みになったら、一緒にお母さんに会いに行こう。手術の様子も見守って」
ハナ「まずは引越ししなきゃ。お母さんもいないのに、ここに一人で住んでるわけにもいかないし」
「うーん」とジュンは家の中を見渡した。
ジュン「ここから引っ越すなら、またうちへ来いよ」
ハナ「NYは?」
ジュンは思わせぶりに前を向いた。
ジュン「…行かない」
ハナ「?」
ジュン「お前一人置いて行きたくないんだ」
ハナ「・・・。」
そう呟き、ジュンは笑って彼女を振り返る。
ジュン「行かないから」
ハナが静かに微笑み返すと、ジュンは手を差し出した。
ハナも手を差し出すと、指を交互に絡ませ、固く握り合う。
そうしてジュンは、二人の絵に視線を戻した。
ジュン「もう二度と、あのときみたいにお前と別れるようなことは味わいたくない」
ハナ「…私も」
二人は静かに笑い合った。
そうやって、僕たちの運命的な恋愛時代が過ぎて行った。
+-+-+-+
<1年後>
そして、あれほど夢見た平凡な毎日が始まった。
スーツケースを手に空港から出てきたハナが、通りを見渡した。
ハナ「こんなことだと思った。ほんとヒドイんだから!」
口を尖らせ、再び一人で歩き出したハナの顔から、次第に笑みが溢れだした。
+-+-+-+
ここで一旦区切ります。
よー分からんまま、あっさり1年後ですか。ずるいのぉ(笑
ジュンちゃんの目がいちいち優しすぎて、いちいちキャプらなきゃ次に進めないんですが…^^;
一番だ!
返信削除いつも ありがとうございます( v^-゚)
やっぱりyujinaさんの訳が、一番好きです♥
入り込んじゃうの!
読みながら、にやけたり...ウルウルしたり...
ドキドキしたり...
いよいよラストですね!
楽しみにしてます!(@^^@)/
いよいよ最終章!
返信削除この数日1から19回まで通して読み返していました。
本当にYUJINAさんの文章は行間が伝わるというか、時にドキドキ、時に涙しながら読ませていただいています。
そしてとうとう最終章にきましたね。
地上波やBS、リアル視聴もしていながら、やはりYUJINAさんの訳でLOVE RAIN のストーリーの良さとグンソクの演技の上手さを再確認しています。
最終章後半、あのバラのアーチのシーンはどのように表現されるのでしょう、楽しみにしています。
ユジナさん、ありがとうございます。
返信削除やはり、涙ぐんでしまいました、途中に入る緑色の文字もいいですね(^^♪
最終回ドキドキですが、楽しみです(*^_^*)
yujinaさん、お疲れさまでした♪
返信削除勢いにのって今回はUPされるのが早いんじゃ…でも、早すぎ?
なんて思って来たら…ビンゴ~\(^o^)/
最終話は展開が良く分からなかったのですが、やっと解読できました。
ますます綺麗になっていくハナを見つめる、
鋭さのかけらもない?ジュンの優しい目が思い浮かびます。
ラスト、楽しみに待ってま~す♪
アップしてくださりありがとうございます♡
返信削除恋を知り、愛を語るようになったジュンの瞳は優しくて穏やかで、\(//∇//)\
北海道の頃のジュンの鋭い目つきからは考えられない、ジュンの成長を感じますよね、
目力で語るソギの演技に改めて魅了されます。
最終回は、なんかわかったような…
( ? _ ? )あれっ?って、しっくりこない事もあったり、正直、これだけゆったりと描いてきた世界だから、もう一話位じっくり四人の未来を描いて欲しかったように思います。
yujinaさんに書いていただきたい位です。
もう、あと後半だけ…なんですよね。
淋しいな…
反面いよいよという期待感も。達成感も。
後半も、じっくり味合わせてくださいませ。
お待ちしております。名残惜しい気持ちでいっぱいです〜。・°°・(>_<)・°°・。
こんばんは、ありがとうございます^^
返信削除父と息子の間を確かにつないでいた絆は、
長年それを覆い隠してきた悲しみから解き放たれ、
再び鮮明に二人の間を流れ始めた。
フーン!!!!! yujina~♪さんの真骨頂ですね!!!!! 素敵な表現ですね!!!!!
ユニの手紙にあった、
あなたたちが出会うために、
私たちが30年まえに出会った
という言葉 このユニの至った気持ちが、ユン・ソクホ監督のこのドラマの流れですよね!!!!!
何度も見返して、ムーヴィーで撮影されている景色やセットの色合いの綺麗さに感動しています。
カットの取り方もきれいな流れで!!!!!
キャップをたくさん入れてくださってるのも、きっとyujina~♪さんがこのことを配慮してくださっ
てることと思っています!!!!!
この20話ー1は、行間にユン・ソクホを感じました!!!!!
ついにゴールまで後一回!!!!! ワクワク!!!!!
ありがとうございます。
返信削除まさか、こんなに早く次がアップされるとは思わなかったので余計嬉しいです♪
ユジナさんはとても感性豊かな方なんですね。
だからこそあんな素敵な表現ができるんですね。
次が最後かと思うと一抹の寂しさも感じますが、最後の最後をお待ちしています。
Yujina様 いつも楽しく拝読しています。
返信削除私も「あなたたちが出会うために、私たちが…」の文章に目からうろこ!
親って子供のことを考えたらこういう気持ちになりますよね。
子供の踏み台になってでも子供の幸せを選ぶ…みたいな(涙)
イナが絵をプレゼントするとは思っていたけど…欲を言えばもう少し引いた、背景が林の中の二人みたいなアングルがよかったかな…。
あとゆるぎないイナの態度にヘジョンの流す涙がちょっと印象的でした。
本当にさよならなのね…と悟るヘジョン。このドラマ皆さん本当に演技派です。素晴らしい!!
いつも本当にありがとうございます。
いつもありがとうございます。
返信削除こんなに早いアップ嬉しいです。
本当に一冊の本で読みたいです。
後半も楽しみにしています。
こんばんは。
返信削除時間が出来たので、改めて全部読ませて頂きました。
改めてドラマの世界に浸ることが出来ました。
ユジナさんの翻訳を読ませて頂いて、いつも感じるんですが、よりドラマの世界に入れて、読んだ後、本当に幸せな気持ちになります。
恋したいなぁ~って、気持ちにもなります(笑)
いよいよ残すは、後半ですね。。
楽しみにしています。無理はなさらないようにしてくださいね。応援しています。。
あたしも、こんなに素敵に理解できるようになりたいです。勉強がんばります‼
おはようございます。
返信削除最終話アップありがとうございました。
いよいよラスト。なんかドラマの最終回を待つような気分。
そして、私の冥土の土産の貴重な一冊も完成間近です。
(作者のyujina様にはお見せしたいですよ。感謝をこめて。かないませんが・・)
では、最後までよろしくお願いします。
yujinaさん、ありがとうございます。
返信削除いよいよ、最終話ですね。いつも、素敵な翻訳で
今回も涙でした。
アナログな私から、質問があるのですが。
次回で終わりますが、ここのブログは ずっと残りますか?
残らないとしたら、ここを 読み返したい時には、
どうすればよいでしょう?
1冊の 本にならないかしら?と思ったりします。
普段、忙しいと 言い訳しながら本を読まない私が、
yujinaさんの文章に吸い込まれ、
活字もいいな~と思いました。
いよいよ、最後かと思うと淋しいです。
次回、楽しみに待ちます~(*^_^*)
皆さんいつもありがとうございます。管理人です。
削除グンチさん、嬉しいご質問をありがとうございます。
このブログはGoogleが提供しているサービスを利用しているのですが、
Googleがサービス終了しない限り、今のところはずっと残しておくつもりです。
いつでも読みにいらしてくださいね^^
yujinaさん 私の質問に お答して頂いて
削除ありがとうございます。
安心しました。最後の回を 読み終えたら、また、
最初から、読み返したいと思います。
途中で 終わってしまうかしら。と心配もしましたが、
最後まで、本当にありがとうございました。
本当に 少しづつですが、勉強を始めました。
いつか、自分の耳と目で 感じたいと思います。
ほんま ずるいのお(爆)
返信削除失礼いたしました。 yujinaさん いつもありがとうございます。
KNTVも見ず、地上波の吹き替えも見ず、DVDの発売待ちの私は、小さなスマホの画面でリアル視聴した時以来の最終回です。
少し前の回から、細かいストーリーがわからなくなっていました。
なんだかやっとこのドラマをちゃんと見た気持ちになりました。
yujinaさんのおかげさまです。
発売されるDVDの日本語字幕では、もはや満足できないのではと思う私です。
台詞以外の、yujinaさんの解説?で、「そういうことが描かれてたんだ!」と気付くことも多く、
DVDを見ながらこのyujinaさんのブログを読むのを、今から楽しみにしています。
「韓国ドラマ50号」という本のインタビューで、ソクホ監督が「時間が足りなくて、したくてもできない事があった」とおっしゃっていましたが、ほんとに惜しいですね。
yujinaさんの訳を読ませていただくと、惜しい気持ちがふつふつと。。。
次回どんなお話かなあ。。。 わくわくして待っています。
ドラマは見ましたので、勿論yujinaさんの文章を、です。
今まで、コメントも書かず楽しませていただきました。
返信削除ありがとうございましたm(_ _)m
私もハングルがんばって勉強します‼
20話までの翻訳本当にありがとうございます(><)
返信削除yujinaさんの美しい文章に情景が浮かび、
涙を流しそうになりながら
引き込まれるように最後までいっきに読んでしまいました
一番好きなシーンは
父親であるイナと息子のジュンが和解をして
かたく握手をするシーンで、とても感動しました(;;)
これからもう一度かみしめるように
一話一話ゆっくりと読みたいと思います
(時々書かれている緑の文字がツボでした(笑))