2012/04/05

愛の雨~ラブレイン4話 vol.1

사랑비(サランピ)4話に入ります。



ではどうぞ




+-+-+-+

1、2、3…
僕は3秒で恋におちた

これまで女の子に見向きもしなかったイナの初めての恋。
それはたったの3秒で始まった。

心臓が狂ったように高鳴り始めた

彼女を
もっと知りたかった



そして、親友の恋した人もまた…彼女だった。

ドンウク「イナ、運命って信じるか?」
イナ「運命か…」

ドンウク「現れたんだろ?運命の相手だよ」
ドンウク「俺にも出来たからさ」

ヘジョン「ドンウク兄は本気みたいよ」

行かないでくれ
そう言いたかった






初めて会った日から
僕の風景は
あなた自身でした


その風景があまりに美しくて
おかげで僕はいつだって心ときめいていました


私もいつか
映画の主人公たちみたいに
愛する人に出会いたい



+-+-+-+

お互いに会いたくて走ったイナとユニは、
夜道を一緒に歩き出した。

イナ「どこかへ行った帰りだったんですか?」
ユニ「散歩してただけなんです」
イナ「・・・。」
ユニ「うちへ来るところだったんですか?」
イナ「あ…いえ、僕も散歩してたところで」
ユニ「(微笑)」
イナ「どういうわけか会っちゃいましたね」

二人は穏やかに笑い合った。

イナ「本当は…すごく会いたかったんです」
ユニ「…私も」

嬉しそうに目を伏せたイナは、今度は迷わず彼女の手を握った。


+-+-+-+

ひとしきり歩いた二人は教会の前にあるベンチに腰を下ろす。
彼女を座らせ、もう一度彼女の手を握り直したイナの横顔を、
ユニがじっと見つめた。

イナ「…?」

自分の唇に出来た血の跡を思い出し、イナは慌てておさえる。

イナ「あ、これ…。大丈夫です。チャンモがちょっと腹立てたみたいで」
ユニ「・・・。」
イナ「大丈夫ですよ。時が経てば分かってくれるはずです」
ユニ「・・・。」
イナ「そうだ。病院、行かなかったんでしょう」

ユニは気まずそうに頷いた。

イナ「はぁ。そんなことだろうと思った」
ユニ「ごめんなさい」
イナ「絶対行かなきゃダメだって言ったでしょう」
ユニ「(微笑んで)ごめんなさい」
イナ「全く…。”愛はすまないと言わない”」
ユニ「・・・。」
イナ「ただでさえ僕たちはこれからもみんなに謝り続けなきゃいけないでしょう?だから、僕たち二人の間では、もう謝ったりしないでおこう」
ユニ「(笑ってうなずき)”愛はすまないとは言わない”」

イナの差し出した小指を、ユニは小指で握り返した。

満足そうに笑い、イナは夜空を見上げる。

イナ「はぁ…。いい気分だ」

ユニは黙ってイナの横顔を見つめ、そっと目を伏せた。

そのとき僕は
ちっとも知らずにいた
彼女がどんな思いで
別れの準備をしていたのか

どこからか音楽が流れてきた。
明るい音に誘われ、教会の中を二人は覗いてみる。
そこでは学生たちが楽しそうにダンスをしていた。

以前は辛くて踊れなかったダンス。
イナが優しく差し出した手に、ユニが笑顔で手を重ねる。
教会の前、イナとユニは二人きりでステップを踏んだ。

イナ「ユニさんが考えてくれた歌詞で、曲が出来たんです」
ユニ「本当?」
イナ「最後は僕が作ったんだけど。ぜひ言いたいことがあって」
ユニ「何ですか?」
イナ「歌で聴かせますね」

+-+-+-+

イナは夜通し五線譜に鉛筆を走らせていた。
曲の終わりにたどりつく。



I love rain
I love you...

迷わず一気に書き上げ、顔を上げるイナ。

+-+-+-+

翌日。
授業を受けるため、被服室へ入ってきたユニに、学生たちはヒソヒソとうわさ話を始めた。

ヘジョンの姿を見つけ、近づこうとすると、視線を合わせることなく立ち上がったヘジョンは、足早に教室を出てしまう。

学生「ホントみたいね」
学生「二人をもてあそんだって?」
学生「そうだよ。美大のソ・イナと春川で一晩過ごしたって」
学生「呆れちゃう」

「キム・ユニ」
学生の一人が立ち上がった。

学生「あんた、頭おかしいんじゃないの?同じ学生として最小限の品位は守ってほしいわ」

+-+-+-+

「ソ・イナ!」

学内を歩くイナに、ドンウクが声を掛けた。
手に持ったテニスラケットをイナに投げ渡した彼は、黙って歩き出した。
イナは重い表情であとに続く。

+-+-+-+

校舎の外へ出てきたヘジョンとインスクは、慌てて走ってきたチャンモに出会う。

チャンモ「イナとドンウクがテニスコートにいるって!」

彼女たちも急いで彼に続いた。

テニスコートに入ってきたヘジョンたちが見たのは、ネットをはさみ、コートで睨み合っているイナとドンウク。

インスク「何を賭けてるんだろう?あぁ…ユニ?!」

ドンウクはボールをトスし、イナに向けまっすぐラケットを振り下ろした。
飛んでいったボールは、構えることなく立っているイナのラケットにあたり、コロコロと転がる。

ドンウク「!」

次の1球を手にしたドンウクは、もう一度イナめがけて力いっぱい打ち下ろす。
球はイナの肩を強く打った。
うつむいたまま、じっと動かないイナ。

ドンウクはもう1球、もう1球と
激しくイナに怒りをぶつけた。


+-+-+-+


外へ出てきたユニに学生が声を掛けた。

学生「ユニ、聞いた?今イナ先輩とドンウク先輩がテニスコートにいるって。行かなきゃいけないんじゃない?」

ユニは走りだした。


+-+-+-+

駆け込んできたユニが見たものは、黙って立ったまま球に打たれ続けるイナの姿だった。

インスク「(ヘジョンに)ユニ、あの子どういうつもりで来たのよ?自分をめぐってケンカしてるのが面白いのかしら」
ヘジョン「あの子のもっと悪いところ、わかる?」
インスク「何?」
ヘジョン「全部知ってて知らん顔したことよ」

彼女の頭に、あの日の会話が蘇る。

ヘジョン(回想)「実は私、イナ兄が好きなの」
ユニ(回想)「!」
ヘジョン(回想)「これは一級機密よ!」

ヘジョンは怒りを噛み締めた。

ヘジョン「ただじゃおかないわ」

#素直に先に言ったほうが腹立てるのはわかる。
#でも、先に言われて言えなくなっちゃった方は、じゃあどうすればよかったんだろうね…。

ドンウクの放った球が、イナの腹部を強く打った。
思わずうずくまるイナ。

ユニとチャンモは同時に走りだした。

チャンモ「やめろ!!!」
ユニ「ダメよ!!!」

チャンモはドンウクにしがみつき、ユニはイナの前に立ちはだかった。

イナ「(ユニに)大丈夫ですから」
ユニ「・・・。」

イナを守ろうとするユニ。
二人の姿にとうとう怒りを爆発させたドンウクは、イナに駆け寄り、襟首をつかんだ。

ドンウク「ずっとそうしてるつもりか!!!最後までカッコつけてるつもりか!!!」
イナ「…お前と争うつもりじゃなかった。それに、ユニさんの前でこんな話をするつもりはない」
ドンウク「こいつ!!!」
ユニ「やめて!」

拳を振りかざしたドンウクをユニが止めた。

ドンウク「! ・・・。」
ユニ「・・・。」

二人を黙って見比べたドンウクは、イライラしてイナを掴んだその手を離した。
そのまま力なく歩き去るドンウク。

ユニ「(イナに)全部私のせいです」
イナ「そうじゃない」
ヘジョン「そうよ。全部あんたのせいってわけじゃない」

そういって近付いたヘジョンは、鞄を開け、黄色い日記帳をユニに差し出した。

イナ「!」
ユニ「これが…どうして?」
ヘジョン「イナ兄が持ってたわ」
イナ「・・・。」
ヘジョン「好きだって?もう止まれないって?イナ兄とユニがどうしてこんなに気が合うのか、どうしてユニのことこんなに理解してるのか不思議だった」
ユニ「日記帳で…知ったんですか?」
イナ「・・・。」
ヘジョン「あんたたち本当に…運命だと思ってるわけじゃないでしょうね。全部嘘だったくせに」
イナ「・・・。」
ヘジョン「(ユニ)あんたなんかいなけりゃ良かった。あんたさえいなければイナ兄とドンウク兄は喧嘩したりしなかったのよ!あんたさえいなければ!!!」
イナ「ヘジョン」
ヘジョン「頼むから…これ以上何もぶち壊さないで」
イナ「・・・。」

ユニは何も言わず、彼に背を向けた。
慌てて彼女を振り返ったイナをヘジョンが引き止める。

ヘジョン「ダメよ!」
イナ「・・・。」
ヘジョン「イナ兄にとって…私たちその程度の存在なの?」
イナ「・・・。」
ヘジョン「私も…すごくイナ兄が好き」

イナは伏せていた視線を上げた。

イナ「!」
ヘジョン「イナ兄の愛だけが辛いわけじゃないわ。だから、この世の終わりみたいな顔しないで」
イナ「・・・。」
ヘジョン「私だってイナ兄のこと好きなのに変わりはないのに、私だけ悪者にならなきゃダメ?」
イナ「・・・。」

+-+-+-+

テニスコートを後にしたユニは一人、学内を歩いていた。
イナが追いつき、それでもなかなか声を掛けられず、距離を縮められないまま彼女の後をついて歩いた。
イナに気づき、ユニが苦しさに表情を歪ませると、そこへ国旗を下ろす音楽が鳴り始める。

一斉にその場で敬礼する学生たち。
ユニが国旗を振り返ると、そこには自分を見つめているイナがいた。
まっすぐな彼の視線に、思わず目を伏せるユニ。

誰もが国旗に思いを一つにする時間。
イナだけが背を向け、彼女だけを見つめていた。

そして…

1歩、また1歩。
彼女に近付いたイナは、彼女を強く抱きしめる。



ユニ「!」

ユニは彼の腕の中でじっと動かずにいた。
しばらくそうしていた後…彼を突き放し、逃げるようにその場を立ち去った。
それ以上追うことも出来ず、彼女の背中を見送るイナ。

+-+-+-+

ユニは部屋で日記帳をめくっていた。
ふと、あの日のことを思い出す。

ユニ(回想)「ひょっとして昨日私の日記帳、いえ、黄色いノートを見ませんでした?」

そう言われ、確かイナは鞄を開けて何かを取り出そうとしたのだ。

日記帳を閉じようとした彼女は、ふと最後のページに目が止まる。
そこには自分のそれではない文字が刻まれていた。

ユニ「?」

君がこの事実を知ったら腹を立てるに違いない
けれど、君に会わせてくれたこの日記帳に、僕は感謝しています
いつか返す日が来るのを思い浮かべながら
卑怯だけど言い訳を書いておきます
これだけはわかってほしい
僕の気持ちは…
全て本物だったってことを

ユニの瞳から一筋の涙がこぼれた。

そのとき…

窓の外から彼女を呼ぶ声が聞こえてくる。

「ユニさん、聞いてください」

イナはずぶ濡れになってユニの部屋の外に立っていた。

イナ「約束どおり、謝ったりはしません。いけないことだと分かってはいたけど…日記帳を通してユニさんを知るのが嬉しかったんです。僕の気持ちは…僕の気持ちは全部本物だったから…僕を信じてほしい」



少し開いたカーテンから外の明かりが差し込んでいた。
窓の外から聞こえてくるイナの声。
「僕を信じてください、ユニさん」
彼女はそこに座ったまま、じっと彼の声を聞いていた。

静まり返った窓。
イナは強く雨に打たれ、立ち尽くしたまま頭を垂れた。

ユニはとうとう立ち上がり、部屋のカーテンに手を掛ける。
そのとき…

「コン!コン!」

突然激しく咳き込んだ彼女は、慌ててハンカチで口を押さえ、うずくまった。
ハンカチが…
赤く染まっていた。

「結核ですね。ずいぶん進行してます」
医者の言葉がよみがえる。

開くことはなかったユニの部屋の窓。
イナはずっとそこから離れられず、じっと窓を見つめていた。

+-+-+-+

学校へやって来たインスク。
彼女は学生たちが噂しあっているのを聞きつける。

「ユニが休学したって!」
「そんなことだろうと思ったわ」
「何なのよホント!」

+-+-+-+

セラヴィではドンウクたちを前にマスターがぼやいていた。

マスター「公開放送まで1週間もないってのに。PDやってる友だちにお前らのことどんなに良く言ってやったか分かってんのか?」
チャンモ「心配しないでくださいよ。あいつちゃんと出ますから。練習もちゃんとやってあるし。だよな?ドンウク」
ドンウク「すみません」
マスター「ん?」
ドンウク「(チャンモに)ごめんな。俺、仲良くやりたくて歌ってたんだ。もう意味がなくなった」

チャンモが思わず立ち上がる。

チャンモ「何て奴だ!お前らと歌うために作った曲なんだぞ!言いたいこと、歌いたい歌を歌うために!」
ドンウク「・・・。」

苦しみを持て余し、チャンモはギターを手にステージに向かった。
チューニングもそこそこに、弦をかき鳴らし歌い始めるチャンモ。

チャンモ(歌)「飲んで 唄って 踊っても~」


客の一人が囁く。
「おい、あれって禁止曲じゃないのか?」「そうだ」「歌っていいのか?」
「黙って聴いてようよ」

曲を止めたチャンモ。
店内に沈黙が広がる。

チャンモ「これが何で禁止曲なんですか!」
客「・・・。」
チャンモ「飲んで歌って踊ってももどかしくてたまらないのに!」

そこに扉が開き、イナが顔を覗かせた。
チャンモがマイクを通してさらにまくし立てる。

イナ「?」

入ってきたイナに気づき、言葉を飲み込むチャンモ。

チャンモ「俺はね、友だちのことでもどかしくて絶対この曲を歌わずにいられないんだ!」

ドンウクがイナを見つめ、黙って目を伏せる。
イナはヘジョンの隣に腰を下ろした。

チャンモ「だから、聞きたくない人は出て行ってくれ。聞きたい人は残って、俺と一緒に歌うなり好きにしてくれ!」

チャンモは再びギターをかき鳴らした。

チャンモ(歌)「さぁ旅立とう!東海へ!」

チャンモの声に合わせ、ドンウクが大声で共に歌い始める。

チャンモ&ドンウク(歌)「鈍行列車に乗って!」

そこへイナが加わった。

3人(歌)「俺たちの愛が壊れたとしても 全て一度に失ったとしても…」

歌い出したイナに視線を移したドンウクは、そのまま一緒に歌い続ける。
いつしか、店内では全ての客が合唱に加わっていた。

全ては胸の中に鮮明にある  美しいクジラが一匹
さぁ旅立とう!東海へ
神話のように生きている クジラを捕まえに
さぁ旅立とう!東海へ…

そこへ、インスクが慌てて飛び込んできてヘジョンに声を掛けた。

インスク「ユニが休学したって!」
ヘジョン「え?!」
ドンウク「!」
インスク「休学して実家に帰ったって!」
イナ「!」

+-+-+-+

揃ってユニの下宿を訪ねた彼らは、しょんぼりと引き返した。
誰も口を開く者はいない。
最後にもう一度振り返ったイナは、ユニの部屋の窓を見上げた。

+-+-+-+

後日。

セラヴィにやって来たチャンモに、何者かが声を掛ける。

男「久しぶりだな」

慌てて作り笑いをするチャンモ。

チャンモ「髪も服装もちゃんとしてますけど」
男「ふざけてるのか?イム・スヒョクはどこにいる?」
チャンモ「スヒョク先輩には長いこと会ってませんけど」
男「ソ・イナは?」
チャンモ「イナは何の関係もないですよ!科だって違うし!」
男「イム・スヒョクの歌った歌は、お前とソ・イナが作ったらしいな」
チャンモ「・・・。」

+-+-+-+

イナたちの下宿。
ライトの下で本をめくるイナの横で、チャンモは悶々としていた。

#いやん、あなたたち一つのお布団で寝てるのねん♥

チャンモ「寝ないのか?」
イナ「…あぁ」
チャンモ「殴って悪かった」
イナ「…ごめん。失望させて」
チャンモ「・・・。」
イナ「それに…ありがとう」
チャンモ「俺こそありがとな」
イナ「?」
チャンモ「公開放送、出られないかと思ったんだ」
イナ「・・・。」

チャンモは嬉しそうにふっと息をついた。

チャンモ「俺の田舎にもな、ラジオはある。絶対聞くって弟たちが言ってたからさ。歌ってやるの…初めてなんだ」

微笑み、頷くイナ。

チャンモ「お前、どうするつもりなんだ?」
イナ「明日ユニさんに会いに行こうと思ってる」
チャンモ「(笑って振り返り)そんなに好きなのか」
イナ「うん」

チャンモはイナに微笑み返した。

イナ「こんな感情、初めてだった。止めることも…変えることも出来なかった」
チャンモ「いやぁ…羨ましいな。そうだよ。心の限り愛さなきゃな。ドンウクも…許してくれるさ」
イナ「・・・。」
チャンモ「はぁ…。恋も何もかもうまく行かない俺は、旅にでも出るか」
イナ「?」
チャンモ「公開放送が終わったら、旅行に行こうかと思って」
イナ「どこに?」
チャンモ「いや、まぁ、綺麗な自然でも見て回ろうかってな」
イナ「・・・。」
チャンモ「とりあえず、俺はもう寝るわ」

話すだけ話し、チャンモは頭から布団をかぶった。

イナ「・・・。」

そっと布団をめくり、少しだけ顔を覗かせたチャンモは、もう一度イナの横顔を見つめ、深いため息をついた。



+-+-+-+

ソウル駅の前までやって来たイナは、そこで足を止めた。
すでにそこで待っていたドンウクが、彼に気づき立ち上がる。

ドンウク「お前が来なかったら、俺がユニを迎えに行くつもりだった」
イナ「いつから待ってたんだ?」
ドンウク「ついさっきだ」
イナ「・・・。」
ドンウク「来ると思ってた」
イナ「…ごめん」
ドンウク「お前のこと、まだ全部許したわけじゃない」
イナ「・・・。」
ドンウク「ユニに謝りたいことがあるんだ。だから、必ず連れて帰って来いよ」
イナ「…ありがとう」

+-+-+-+

イナを乗せた列車は南平駅に辿りついた。

+-+-+-+

実家の縁側で本を広げていたユニは、ふと本を閉じて空を見上げ、再び寂しそうに目を伏せた。

そこへ、帰ってきた祖母が声を掛ける。

祖母「寒いのに外に出ちゃダメだよ!中に入ってなきゃ」
ユニ「大丈夫。ちょっと気晴らししたくて」
祖母「それなら、ちょっと歩いておいでよ」
ユニ「そうしますね」

歩き出したユニの背中に、祖母が続けた。

祖母「ユニ」
ユニ「?」
祖母「おじさんのところへ行こう。おじさんから手紙が届いたらすぐに」
ユニ「・・・。」
祖母「(ユニの手を握り)他所へ行って治療を受けるんだよ」
ユニ「・・・。」
祖母「(座り)お祖母ちゃんも、もう疲れちゃってね。おじさんのところに行って、のんびり過ごしたいんだ」
ユニ「・・・。」
祖母「そうしよう。ね?」

ユニは頷き、祖母に微笑みかけた。

祖母「(何度もうなずき)そうだよ。よく決心したね。それでいいんだよ」

涙を拭く祖母に、ユニは「行ってきます」と声を掛け、家を出た。


+-+-+-+

イナはメモを片手に、田舎道を歩いていた。
ある家の前に立ち、もう一度メモと見比べた彼は、緑の門扉をくぐる。

イナ「こんにちは」

取ってきた柿を磨いていたユニの祖母が振り返った。

祖母「はい?」
イナ「ユニの大学の友人なんですが、ひょっとしてここにいませんか?」
祖母「あ、えぇ。ついさっき散歩に出掛けたんですよ」

祖母に頭を下げ、イナは踵を返した。
門を出た彼は、はやる気持ちに駆け出す。

ひとしきり走った彼は、そこに学校があるのに気づき、ユニの言葉を思い出した。

ユニ(回想)「父は国民学校の先生でした」

彼は学校に向かって走りだした。
校庭ではたくさんの子どもたちが思い思いに遊んでいる。
イナはその間を進んだ。

ユニ(日記)「今でもときどき聞こえる気がする。子どもたちの遊ぶ声と、そよ風の音。そして、放課後、お父さんが弾いていたオルガンの音」

ふと彼は、教室から聞こえてくるオルガンの音に足を止める。
音の流れてくる方向から目を離すことなく、まっすぐに近づくイナ。
教室の前まで来ると、開いた窓の中に、オルガンを弾く彼女の姿を見つけた。



たまらず彼は、廊下側へ周り、教室の入り口を探す。
「ガラガラガラ」
彼がドアを開けると、オルガンの音が止んだ。

ユニ「!」

彼に気づき、目を逸らすユニ。
立ち上がり、逃げ出そうとした彼女にイナが駆け寄った。

イナ「待って!」
ユニ「!」
イナ「待ってください」
ユニ「(背を向けたまま立ち止まる)・・・。」
イナ「驚かせるつもりじゃなかったんです」
ユニ「・・・。」
イナ「黙って行くなんて。僕はどうすればいいんですか」
ユニ「・・・。」
イナ「顔を…見せてくれないんですか?」

ユニは冷めた表情で振り返った。

イナ「許してほしいんです」
ユニ「許すようなことじゃないと思うんです」
イナ「・・・。」
ユニ「家政大の前で待ってた日、きっと日記帳を返しに来たんですね。それなのに、私が急いで行ってしまったから」
イナ「・・・。」
ユニ「だからイナさんが悪いんじゃありません」
イナ「・・・。」

ユニは悲しそうに目を伏せ、思い直したようにもう一度視線を上げた。

ユニ「ただ…自分の気持ちが本物じゃないって気付いたんです」
イナ「!」
ユニ「イナさんを好きなわけじゃなかったんです。ただ、私の気持ちを理解してくれる人に会いたかった…それだけなんです」
イナ「!」
ユニ「日記帳を読んだとも知らずに、それが愛だって勘違いしてました」
イナ「・・・。」
ユニ「そう気づいて、自分が恥ずかしくなりました」
イナ「・・・。」
ユニ「ドンウクさんとイナさん、二人を弄んだと噂されてる通りだなって…そう思って。それで逃げ出してきたんです」
イナ「・・・。」
ユニ「周りの人を傷つけたくはありません。だからもう会いに来ないで」

背を向けたユニの腕をイナが掴んだ。

イナ「嘘だ」
ユニ「・・・。」
イナ「嘘でしょう?」
ユニ「…放してください」
イナ「僕の話、最後まで聞いてください。まだ言いたいこと、言えなかったこと、言わなきゃいけないことがあるんです。ユニさんに…最後まで聞いて欲しいんです」
ユニ「・・・。今は聞きたくありません」

イナの手を振り切り、ユニは足早に教室の出口に向かった。

イナ「公開放送に来てください!待ってますから!」

ユニは答えることなく、教室を後にする。

+-+-+-+

ここで一旦区切ります。

28 件のコメント:

  1. やわらかさが 素敵です(⌒‐⌒)
    つづき 楽しみにしています♪

    返信削除
  2. yujinaさん、おはようございます♪
    yujinaさんの翻訳、待ちに待ってました。お忙しい中、本当にありがとうございます(^-^)

    あぁ、本当に切ないですねぇ(泣)
    ユニが吐血した時はまたまた「秋の童話」を思い出してしまいました!あれは白血病だった気がするけれど。

    70年代の韓国って、夜間外出禁止やら唄ってはいけない歌やら…色々厳しかったんですね。そうゆう時代背景が分かるのも、とても興味深いです。

    読書が苦手な私でも、yujinaさんの翻訳はすっと頭に入ります。本当に有り難いです。

    返信削除
  3. いつもありがとうございます

    続き楽しみにしています。

    返信削除
  4. 本当にありがとうございます。
    簡単な単語しか分からないので助かってます。
    お忙しいとは思いますが宜しくお願いします。
    続き楽しみです。

    返信削除
  5. よ~ちゃん2012年4月5日 6:43

    今回もありがとうございました。
    頭では想像した言葉で見てますが
    やっぱりこうして細かな訳は
    分からないので本当に嬉しいです。
    また楽しみにさせて貰います。
    お疲れ様でした。

    返信削除
  6. yujinaさんいつもありがとうございます。
    サランピ以上?にyujinaさんの翻訳があがるのを楽しみに待っている私です。
    とっても優しい文章(訳)でリアルタイムで見た映像に素敵に重なって、すっかりyujinaワールドに引き込まれています。
    続きが待ち遠しいです!!
    これからも宜しくお願いします。

    返信削除
  7. いつもyujinaさんの翻訳で 自分の感じた「愛の雨」の答えあわせをしています。
    今回も どうしてもわからないことがあり 翻訳を見て「あ~そうだったんだ!」と謎が解けて
    嬉しかったです。いつも字幕に頼り切っていた分 字幕ないドラマは 自分の感じたままでしかなく
    もどかしさもありますが 一生懸命聞き覚えのある単語を聞き取ることで ドラマの世界に近づきたいと思っています。yujinaさんの翻訳は まるでその場にいたように言葉の描写が美しので大好きです。これからも楽しみにしています。

    返信削除
  8. ユジナさん いつもすてきな翻訳をありがとうございます。
    読んでいるだけでも、ドラマの光景が思い出されて。。これからも楽しみにしています。
    そして、私も勉強を頑張ります(*^。^*)

    返信削除
  9. おはようございます(^^)

    今朝も…まっさきにyujinaサンをチェック‼
    4話の訳があがっていて、ドゥグン♡ドゥグン♡
    ありがとうございました(>_<)
    更に切なく…胸が苦しくなりますが
    これからも楽しみにしています♬

    返信削除
  10. 忙しい中、いつもありがとうございます。お陰でラブレインの中にどっぷり浸れます。こちらの訳のお陰で4話とっても切なくて 重みが出てきました。今後が、楽しみです。

    返信削除
  11. おはようございます。

    今回も、素敵な翻訳ありがとうございます。
    もう切なくて。。。何度も読み返しながら
    また、涙がでちゃいました。

    ユン・ソクホ監督の作品は、情景・初恋・愛などのテーマにしていて、すごく見いってしまいます。今後の展開を楽しみにしてます。
    お忙しいと、思いますがこれからよろしくお願いします^^

    返信削除
  12. いつもありがとうございます。
    4話はいっぱいいっぱい解らなくて・・・
    もどかしくモヤモヤしていたんです。
    訳を読ませていただいてスッキリしました。
    そしてまた涙しました。

    大変だと思いますがこれからもよろしくお願いします。

    返信削除
  13. ありがとうございます。

    1,2話は想像でなんとかしましたが・・・。

    3話あたりから、もう、???になっていました。

    なぜ、別れちゃうの?、なぜ警察につかまってしますの?などなど(^^)

    こんなに素敵な翻訳☆

    タイプするのも大変ですよね。

    本当にありがとうございます。

    返信削除
  14. お忙しい中 感謝します。
    4話楽しみに待っていました!

    いつもすばらしい翻訳・・
    感動しながら映像とともに読ませてもらっています。

    大変ですがどうぞよろしくお願いします!

    返信削除
  15. yujinaさんの翻訳♪心待ちにしてます!すっかりyujinaさんの文章のファンになりました。「踵を返した!」‥情景の描写がとても好きです。小説を読んでいるようで夢中になってます!(^^)! 緑のコメントもツボにはまって~楽しんでいます!  続き♪お待ちしています。o(^-^)oワクワク

    返信削除
  16. yujinaさんの4話の翻訳を、すごく楽しみに待っていました。^^

    あの日記帳の最後、イナはなんて書いていたのか・・・すごく気になってて。
    字幕なしで、映像だけで見ているので、yujinaさんの翻訳を読ませて頂いて
    あぁ~そういう事だったんだぁ~。とか、ここで、こんな深い意味があったんだと、
    言葉の分からない私は、モヤモヤがスッキリ・・・という状況です。


    台詞だけでなく、細かい描写まで、素敵に書いて下さり、とても楽しみに
    読ませて頂いています。印象に残る写真まで、時折入ってるのが、また、嬉しい~

    続き、お待ちしています❤^^❤

    返信削除
  17. ありがとうございます!!気になって気になって……
    映像から予想しながらでも泣けてたのに、本当に切ない(TT)追いかけられている理由がわかっただけでもスッキリ(*^^*)後半も楽しみです! そうそう、1つの布団。私も思いましたぁ~(笑)

    返信削除
  18. いつも拝読させていただいています。
    お忙しいのにありがとうございます。
    小説のように何度も読み返しては、ドラマの余韻に浸り、
    ???だった内容がよくわかって、一層深く心に響きます。
    続きも楽しみにしています。

    返信削除
  19. いつもありがとうございます。とてもわかりやすくて…キュンキュンきます。
    これからもよろしくお願いします。

    返信削除
  20. 待っていました。ありがとうございます!
    ドラマの内容がよくわかるだけでなく、心に染みてくる和訳ですね。いつもながら、見事です。
    後半待っています。

    返信削除
  21. いつも放送が終わってからまだ翻訳されてないかなって何回も来てしまいます。
    4話も頭の中が???だった事、翻訳を読ませてもらい・・・今、映像を思い出し、やっとジーンと感動が押し寄せて涙しています。
    本当に素敵な翻訳の文章、感謝しています。

    返信削除
  22. いつもありがとうございます.

    読みながら涙が....切ないですね.

    返信削除
  23. お忙しいのに、ありがとうございました。
    3話、4話セリフが多く早く。
    お話の展開が不明なところが多過ぎで・・・消化不良中でしたが、
    お蔭様で、かなりスッキリしました♡

    これから、いよいよ現代。
    セリフ、早くて多そうですね。

    これからもよろしくお願いいたします。

    返信削除
  24. 本当に、いつも素敵な翻訳ありがとう ございます。
       すうっと引き込まれ…一気に読んでしまいました。
      ユニの日記帳の裏側に、何て素敵なmessageが書かれていたのですね!♪  
       又、涙…しまいました。 さらに、「サランピ」が好きになり、5話が待ち遠しいですぅ。♪ 
        本当に、感謝しています。 コマスミダ~♡    
         これからも、よろしくおねがいしましす。

    返信削除
  25. いつも、翻訳ありがとうございます。
    画像を思い浮かべながら、あっという間に読んでしまいます。
    これからも、よろしくお願いします♪♪♪

    返信削除
  26. いつもありがとうございます♪♪本当に切なくて涙なしでは読めません(ToT)この時代には
    ちょっとした行き違いやことばが足りないために随分悲しい苦しい恋があったのでしょうね(>_<)でもこの二人には本当に幸せになって欲しいです。引き続き読ませて頂きます。

    返信削除
  27. いつも、すばらしい翻訳ありがとうございます。
    ほぼ一週間ぶりに訳をよませていただいたのですが、映像を思い出して自然と涙があふれ出てきました。
    ラブレインの美しい映像とユジナさんの小説のように美しい訳がぴったりでいつも感動しています。。。明日から場面が現代に移り、また楽しみですね♪
    これからも、どうぞよろしくお願いします。

    返信削除
  28. 初めまして。
    今回初めて翻訳を読ませていただきました。再放送とともに拝見しましたが、タイムリーで見るより何倍も楽しむことができました。
    ありがとうごさいます。
    最終回までお世話になりたいと思いますのでよろしくお願いしますo(^-^)oワクワク。

    返信削除