さっそくどうぞ
+-+-+-+
30年ぶりにユニの前に現れたイナは、またずぶ濡れだった。
イナ「…そうなんでしょう?」
ユニ「!」
イナ「生きてたんですね。生きていたんだ…」
ユニ「・・・。」
1歩。2歩…
ユニは雨に濡れたイナにそっと黄色い傘を差し掛けた。
+-+-+-+
ジュンとハナは二人、赤い屋根の下で雨を見上げていた。
ハナ「まだ話すことがあるって、何ですか?」
ジュン「一度終わったらそれでオシマイだって」
ハナ「それは分かってますから」
ジュンは雨からハナへと、ゆっくり視線を移す。
ジュン「だから俺たち…ここで終わりにして、また最初から始めよう」
「?」彼の言葉が理解できず、ハナは丸い目でジュンを見つめた。
ジュン「ここで終わりにして、もう一度最初から始めたいんだ」
ハナ「何を…最初から始めるの?」
ジュン「それは…」
ハナ「・・・。」
ジュン「そうだ、何であんなに電話してきたんだ?」
ハナ「・・・。」
ジュン「電話に出ないからって何度も掛けてきて、何でここまで会いに来たんだ?そんなにバイトしたかったのか?別にやりたいわけじゃないんだろ?」
ハナ「それは…。あのときのことが心に引っ掛かってたからよ。終わりだとか何とか…あんなふうに怒って帰っちゃって」
ジュン「あぁ~。(ニヤリ)そうか?」
ハナ「・・・。何で笑うの?」
ジュン「ってことは、お前も俺と終わりにしたくなかったってことだな?」
ハナ「え?!」
ジュンは嬉しそうに笑ってまた雨を見上げた。
ジュン「確かにな。俺ほどの人間、どこ行ったって出会えるわけないもんな」
ハナ「・・・。」
ジュン「このまま終わらせるには惜しいわな…(うんうん)」
呆れたハナはさっさとリュックから折りたたみ傘を取り出した。
ハナ「帰ります」
ジュン「(腕を掴み)帰ってどうすんだ!俺は傘持ってないんだぞ」
ハナ「好きにしてくださいよ。誰か呼べばいいでしょ?」
傘を開こうとするハナ。彼女の腕を掴むジュンの手に、さらに力がこもる。
ハナ「?」
ジュン「…大事にする」
ハナ「・・・。」
ジュン「俺はこれからお前のこと大事にする。そう言ってんだ」
ハナ「・・・。ど…どうして?」
ジュン「(微笑)どうしてだと思う?」
ハナ「?」
そこへ…「ぴゅるる~~ん♪」とハナの電話が鳴り始めた。
#もぉーーー このドラマ、いいところで電話鳴らすのいい加減やめれー!
ジュン「あーウルサイな。その音、変えろよ」
ハナ「こんな音じゃなきゃ野外で仕事中聞こえないんですから!」
ハナ(電話)「うん、お母さん」
そこへジュンの電話も鳴り始める。
ジュン(電話)「えぇ、父さん」
「お母さん」「お父さん」…そう言って二人は思わず顔を見合わせた。
ハナ(電話)「ううん、部屋は一人で探すから気にしないで」
ジュン(電話)「僕も仕事がありますから。気にしないでください」
+-+-+-+
イナとユニは雨を避け、近くのカフェに入って来た。
ユニ(電話)「大丈夫?もうちょっと待ってくれたら、お母さん行けそうだけど」
娘と話すユニの後ろ姿を、イナがじっと見つめた。
ユニ(電話)「うん、ちょっと人に会ったのよ。じゃあまた家でね」
電話を切ったユニがイナを振り返り、微笑む。
ユニ「娘なんです。大学に通っていて」
イナは静かに頷いた。
見つめ返すユニに言葉が出ず、また何度もただ頷いてみる。
ユニ「(イナの服を見て)すっかり濡れてしまったわ」
それでもまた黙って頷くイナに、ユニが微笑んだ。
+-+-+-+
二人の席に暖かいコーヒーが運ばれる。
ユニ「久しぶりです。本当に…長い月日が流れましたね」
イナ「もうあなたがこの世にいないと…僕はずっとそう思って生きてきたんです」
ユニ「そうかもしれないと思っていました」
イナ「アメリカからいつ帰ってきたんです?」
ユニ「10年ほど経ちました」
イナ「・・・。それなのになぜ僕に会いに来なかったんです?あなたが死んだとばかり思って、僕は長い間苦しんでいたのに」
ユニ「・・・。」
イナ「生きていると…それだけ言ってくれてもよかったのに」
ユニ「・・・。」
イナはこれまでの苦しみを思い、俯いた。
ユニ「私はときどきあなたの消息を聞いていました」
イナ「?」
ユニ「記事で展示会のことも知りましたし、雑誌で家族と一緒の写真も見ました。ヘジョンと結婚したことも知りました」
イナ「・・・。」
ユニ「嬉し…かった。幸せそうで。私も嬉しかったんです」
イナ「・・・。」
ユニがコーヒーカップを手にした。
イナ「これまでどうしていたんです?」
ユニ「私は…。私もずっと幸せでした」
イナ「・・・。」
ふと窓の外の雨を見上げ、ユニが微笑む。
ユニ「今日もまた雨ですね。私たちが会うときはいつも雨が降っている気がするわ」
イナもまた、ゆっくりと窓の外を眺める。
そんなイナの横顔を、今度はユニが見つめた。
ユニ「ごめんなさい」
イナ「・・・。」
ユニ「生きていると伝えられなかったこと…」
イナ「・・・。」
+-+-+-+
「何だよここ?何でこんなに上り坂なんだ?」
結局、ジュンはハナの小さな傘を広げ、二人で肩を寄せ合って歩いていた。
ハナ「だから人の部屋探しに何でついて来るんですか」
ジュン「こんな高い場所に住めんのか?ここから歩いて通うって?(ハナを見て)まぁ、頑丈そうだしな」
ハナ「何ですって?!」
ジュン「ついて来る理由もなにも。大事にしてやるって言ったろ」
ハナ「これが大事にするってこと?」
ジュン「?」
ジュンが差している傘は彼の方に傾き、彼女の肩は雨に打たれていた。
ジュン「お前の服は濡れても大丈夫だろ。俺の服は濡れちゃダメなんだ」
ハナ「(傘を掴んでまっすぐに)私の傘ですからね!」
ジュン「あぁ分かったから」
二人はふたたび歩き出した。
ジュン「はぁ…。雨の日はホント嫌いだ」
ハナ「私は好き^^」
ジュン「何で?」
ハナ「お母さんは雨の日が一番好きだったから。子どもの頃、雨が降るたびにお母さんと散歩に行ったの。だから、雨の日には幸せな思い出が多いんです」
ジュン「そういえばお前、日本でお母さんの初恋の人探してるって言ってたよな」
ハナ「(イラッ)誰のせいで会えなかったと思ってるの?」
ジュン「そんなもん探してどーすんだよ」
ハナ「お母さん…ちょっと具合が悪くて」
ジュン「!」
ハナ「だから一度くらい会わせてあげたかったんです」
ジュン「・・・。」
ハナ「(ボソッ)何でこんなこと話してんだろ。(ジュンに)内緒ですからね!」
+-+-+-+
イナとユニは、もう一度二人を出会わせた横断歩道に戻って来た。
ユニ「それでは…」
頭を下げたユニにイナが思わず口を開く。
イナ「あの…」
ユニ「?」
イナ「また会えますよね?」
ユニ「・・・。」
ユニはゆっくりと首を横に振った。
ユニ「こうやってお会いできて、とても良かった」
イナ「本当に…、もう会えないんですか?」
ユニ「あなたが幸せで、私も幸せで。それさえ分かればいいんです」
イナ「・・・。」
ユニはもう一度頭を下げ、彼に背を向けて歩き出した。
黄色い傘が遠ざかり、曲がり角の向こうに消えていく。
イナもまた、反対方向へ足を踏み出した。
そして…
イナ「・・・。」
立ち止まったイナは、今来た道をまた走り出した。
幸せであるわけがない。
ずっと…想い続けた人にようやく会えたのに、どうしてこのまま別れることができるものか。
走れど走れど、一度別れたユニの姿は見当たらない。
通りのこちら側、あちら側、イナは夢中で辺りを見回した。
+-+-+-+
ユニは薬局に来ていた。
目薬をさし、ホッと一息つく。
店の外を、イナが彼女を探して走り去った。
薬剤師「大丈夫ですか?」
ユニ「えぇ。急に目が疲れてしまって」
薬剤師「入って来られた時、全くお見えになっていないようで驚いたんですよ。でも、この薬はしばらく目の疲れを取ってくれるだけです。お分かりですよね?」
ユニは微笑み、頷いた。
ユニ「もう大丈夫です。薬を置いてきてしまったので」
+-+-+-+
薬局を出て歩き出したユニの向こうで、イナはまだ彼女を探していた。
イナが後ろを振り返ると、すぐそばを通り過ぎようとしたユニの姿はトラックに遮られた。
+-+-+-+
ジュンはハナの部屋探しにまだくっついて回っていた。
不動産屋に案内され、物件を見に入る。
自分の頭が天井にぶつかるほど窮屈な部屋だ。
ハナ「・・・。」
思わず、ハナは入り口で覗きこむジュンを振り返った。
顔をしかめて「やめとけ」と合図するジュン。
次に来た場所はまださっきよりはマシな場所だ。
天井も高く、安っぽい壁紙も貼られていはいない。
暖房も入り、日当たりも良さそうだ。
ハナは気に入った様子で部屋を見回した。
ジュン「けどさ、何でこんな狭いんだよ?」
不動産屋「そうだなぁ。二人で住むにはちょっと狭いかもしれないけど」
ジュン&ハナ「?」
不動産屋「新婚のご夫婦かな?」
ハナ「違いますよ~。新婚だなんて」
不動産屋「それなら…(ニヤリ)同棲?」
ジュン「え?!」
+-+-+-+
二人は次の物件を見にやって来る。
ジュン「何で階段がこんな狭いんだよ」
ハナ「文句ばっかりね」
部屋の中を見ているハナを置いて、さっさと家の前に出てきたジュン。
向かいの家から体格のいい男性が下着姿で出てきたのに出くわす。
ジュン「・・・。」
ジュンと目が合うと、男性は軽く腕立て伏せを始めた。
ハナ「まぁ悪くないみたい」
ハナが外へ出てきた。
ジュン「どこが悪くないんだ!来い!」
彼女の腕を掴み、ジュンは早々にその場を立ち去った。
通りまで素直に引っ張ってこられたものの、ハナは不満だ。
ハナ「どうしてさっさと出てきちゃうのよ」
ジュン「男が向かいから眺めてるのに、そんなとこに女一人で住めるわけないだろ」
ハナ「じゃあどうしたらいいんですか?アルバイトも見つからないし、あのくらいのアパートじゃないと住めないのに」
ジュン「俺が探してやる」
ハナ「え?」
ジュン「俺が探してやるって。アルバイトも家も、俺が見つけてやる」
#ジュンの「~줄게(~してやるから)」がすごく良いのだ♥ そこだけふっと語尾が優しくなって聞いてる方も「ふわっ」っとなるのだ♥
ハナ「(呆)とんでもないこと言わないで!」
ジュン「・・・。」
ハナが広げようとした賃貸情報誌を、ジュンは乱暴にひったくった。
ジュン「俺が探すっつってんだろ!」
ハナ「どうして?!」
ジュン「大事にするって言ったろ」
ハナ「…ホント変。今日はどうしちゃったんですか?」
ジュン「・・・。」
ハナ「最初からまた始めようとか言ったり、大事にするとか言ったり…」
ジュン「・・・。」
ハナ「しまいには他人のアルバイトと部屋まで探してやるとか」
ジュン「お前、バカか?」
ハナ「?」
ジュン「俺は超忙しくて高い人間なんだ。それなのに何でお前について回ってるのか、ホントにまだ分かんないのか?」
ハナ「?」
ジュンが言葉を続けようとしたそのとき…
「ぴゅるる~~ん」
#だーかーらー il||li. _| ̄|○il||li ぴゅるるん断固反対同盟 ここに締結
ハナが携帯を取り出すと、画面には「テソン先輩」の文字。
彼女は動揺してポケットに電話を戻そうとした。
ハナ「何でもない」
気まずそうなハナの様子に、ジュンは彼女から携帯を奪い取る。
ジュン「こいつの電話だけは特別だってわけか。付き合ってんのか?」
ハナ「ち、違うわ」
ハナと携帯をじっと睨んだジュンは、鳴り続ける携帯を切ってしまった。
ハナ「そのまま切っちゃってどうするんですか?!」
ジュン「代わりに切ってやっただけだろ」
切れてしまった携帯をうらめしそうに見つめるハナの顔を、ジュンは楽しそうに覗きこんだ。
ジュン「フラれたか?」
ハナ「・・・。」
ジュン「フラれたんだな~!」
ハナは携帯をポケットにしまい、黙ってジュンを睨み返す。
ジュン「こんなやつにフラれてどーすんだよ」
ハナ「・・・。」
ジュン「もう一度始めようって言ったよな。大事にするって。つまりお前のこと気になってるってことだろ」
ハナ「・・・。」
ジュン「最初から気になってた。韓国に戻ってからも気になってたし、再会したときも、今でも気になってる」
ハナ「?!だから…どうして?」
ジュン「さぁ。よく分かんねーな」
ハナ「?」
ジュン「とにかく、それが分かるまで俺のそばにいてもらう」
ハナ「え?」
#何でもない道端なのに、光の当たり方がものすごく綺麗♪
ジュン「・・・。俺がいても部屋探しの助けにはならないようだから、今日はもう帰るわ。また撮影の日にな。遅れずに来いよ」
ハナの反応も待たずに、ジュンはさっさと一人で歩き出した。
ハナ「さ、撮影?!」
+-+-+-+
かっこつけて歩いてきたジュンは、角を曲がったところでハナが見えなくなったことを確かめ、フラフラと高鳴る胸を押さえた。
#ぎゃははは。゚(*゚´∀`゚)゚ノ彡☆
溜息をつき、また歩き出す。
ジュン「はぁ…。最高にキマったな」
+-+-+-+
ユニはバスに揺られていた。
気丈に彼と別れ、街を歩いてきた彼女は、バスの座席で一人になると途端に涙が止まらなくなる。
ユニとの再会が嘘のように柔らかく晴れ上がった街。
イナは力なく通りを歩いていた。
+-+-+-+
ジュンが戻ってくると、いくつかのスーツケースにまとめられた荷物が届いていた。
ソノ「どうしたんだ?」
ジュン「今朝、家政婦さんに俺の荷物を送ってもらった」
ソノ「家、出てきたのか?」
ジュン「仕事で忙しいから当分ここで暮らすって、家にはそう言ってある」
ソノ「・・・。」
ジュン「このところちょっとモヤモヤしててな。それともこのまま家を出ちまおうか」
ソノ「お母さんに引き止められそうだな」
ジュンは微笑み返し、俯いた。
ソノ「何かあったのか?」
ジュン「母さんが父さんと再婚したいってさ」
ソノ「あぁ…」
ジュン「離婚するときは留学したから、再婚するなら…もう戻らずにいようか」
ソノ「ご両親のことだろ。お前には関係ない」
それには答えず、ジュンはそばにあった雑誌を手にとった。
ジュン「妹はアメリカから帰ってきたのか?」
ソノ「ミホか?まだ。来週帰ってくるって言ってたな」
ジュン「おい、俺がここで暮らすってミホには言うなよ」
ソノ「(笑)何だよ?言ったらミホが荷物まとめて押しかけるって?」
ジュン「あぁ」
ソノ「(笑)」
ジュンはふと思いついて立ち上がり、隣の部屋を覗きこんだ。
すっきりと片付いた男の子の部屋だ。
ジュン「この部屋、貸してもいいか?」
ソノ「え?」
ジュン「どうせ使ってないんだろ?」
ソノ「誰に?」
ジュン「・・・。」
説明しようとして口を開いたものの、言葉の代わりにジュンは首を横に振った。
+-+-+-+
ハナは公園のベンチで溜息をついていた。
さっきのジュンの言葉がどうにも気になって仕方がない。
「最初から気になってた。韓国に戻ってからもそうだし、再会した時もだ。今も気になってる」
「どうして?」
「それが分かるまで、俺のそばにいてもらう」
ハナ「聞き間違えたのかな?あの人、頭おかしくなっちゃったのかな?ひょっとして…」
正解が浮かびかけたところで、「いやいや」と彼女は笑って否定した。
ハナ「そんなわけないや~」
#嬉しそうにしてるから、ひとまずホッとした^^
ハナ「もっといじめるつもりに違いないわ。はぁ…。モデルのバイトして大丈夫かな」
そこへまたやって来た「ぴゅるる~~ん」。
再び画面には「テソン先輩」と表示されている。
彼女は携帯を手に取り、じっとその文字をみつめた。
ハナ「はぁ…。バカね。私が大丈夫なのか気になってるんでしょ。でもね、今は話したくないって言ったよね、先輩。仕事でも頑張ってやってなよ。分かった?」
自分に言い聞かせるように彼の名前に向かって話しかけ、彼女はプツリと電話を切った。
+-+-+-+
ユニは静かな自宅の扉を開いた。
ひとしきりじっとそこに立ち尽くしていた彼女は、しまってあった小箱を出し、そっと開く。
そして、その中から手作りの綺麗なカバーが掛けられたノートを手に取った。
+-+-+-+
ドンウクは思いがけない来客に上機嫌で病院の庭へやって来た。
彼を待っていたイナの後ろ姿に声を掛ける。
ドンウク「お前が訪ねてくるとはどうしたんだ?さっき手術室に入る前、雨が降ってきてお前のこと思い出したところだ。昔、雨が降った日はよく飲んだよな」
イナ「・・・。」
ドンウク「どうしたんだ?」
イナ「・・・。」
ドンウク「何かあったのか?」
#「何かあったのか?」とか言われると、「うん、君こそ何かあったのか?」と未だに言いたくなって素直に見られない(苦笑
イナは顔を上げ、かすかに微笑んだ(←この表情、昔の彼と一緒だね^^
イナ「ユニに会った」
ドンウク「誰?」
イナ「ユニが…生きてたんだ」
ドンウク「何だって?!」
二人は人気のないベンチに並んで座って話し始めた。
ドンウク「元気にしてるのか?」
イナは黙って深く頷いた。
それに応え、ドンウクも頷き、彼女への思いを噛み締める。
ドンウク「今でも綺麗か?」
再び頷き、微笑むイナに、ドンウクも微笑む。
イナ「幸せそうだった。それで、何も聞けずに別れてしまったんだ」
+-+-+-+
すっかり日が落ちていた。
ハナが植物園の扉を開けると、そこには緑に囲まれて日記帳をめくっている母の姿があった。
日記帳を閉じ、そっとテーブルの上に置いた母は、ぼんやりと夜空を見上げ、考え事に耽る。
#後ろのライトがお月様になってて、いちいち素敵♪
じっと母を見つめていたハナは、明るく声を掛けた。
ハナ「お母さん」
ユニ「あぁハナ、おいで」
ユニは自分の掛けていたブランケットを広げ、自分と一緒に娘の肩を包む。
ハナ「まだ寒いのに外に出てるなんて」
ユニ「^^」
ハナ「何読んでたの?」
ユニ「お母さんの昔の手帳よ」
ハナ「ふ~ん。お母さん、ひょっとして具合悪かったの?昼間、具合が悪くて来られなかったんじゃないの?」
ユニ「ううん」
ハナ「ホントに?」
ユニ「ホントよ」
ハナ「^^」
ユニ「一人で部屋探ししてたの?」
ハナ「えーと、ううん、一人じゃなくって。ちょっとね」
ユニ「誰と行ってたの?テソンは済州島に出張中でしょ」
ハナ「友だちじゃなくて…まぁ、そういう人がいたのよ」
ユニ「誰なの?男の人?」
ハナ「うん。それはそうなんだけど、その…」
ユニ「?」
ハナ「絶対そんな仲じゃなくって!気に…なってるわけでもなくて、ただ…」
ユニ「・・・。」
ハナ「分かんない!おかしな人がいるのよ」
ユニ「(笑)誰かしら。気になるわ」
ハナ「…ふふっ」
ユニ「お母さん、もうちょっと持ち堪えなきゃいけないのに」
ハナ「・・・。」
ユニ「お嫁に行くのも、ハナが作る庭も…全部見なきやいけないのに」
ハナ「どうしてそんなこと言うのよ!」
ユニ「お母さんはハナの重荷になりたくないのよ」
ハナ「お母さん!」
ユニ「(微笑み)うん。分かったわ。言わない」
ハナ「・・・。」
ユニ「もう言わないわ^^」
ハナ「・・・。」
ユニ「言わないから」
+-+-+-+
イナはまた雨の中、車を走らせていた。
赤信号で停止した彼の前に、行き先表示が掛っている。
直進するとソウル。左へ進めば光州・昆池岩。右へ進めば清平・雪嶽へとつながる。
表示をじっと見つめた彼は、左へハンドルを切った。
+-+-+-+
ユニは今日も植物園で土をいじっていた。
彼女の背後で、イナはそんな彼女をじっと見つめる。
#早っ?こんな簡単に会いに来れたん?
作業を終え、立ち上がって手袋を外したユニは、ようやく後ろに立っているイナに気づいた。
ユニ「!」
驚いて立ち尽くすユニに、1歩ずつ、ゆっくりとイナが近づいていく。
彼女の前までやって来た彼は、それでも何も言わず彼女を見つめた。
そして…
彼はたまらず彼女を抱きしめた。
言葉にならない30年の思いが溢れだしたように。強く、彼女の細い体が折れるほどに。
ユニは彼の腕の中で優しくその背中を撫でた。
+-+-+-+
「私は…」
二人は植物園で小さなテーブルを挟んで座っていた。
ユニの言葉を聞くのを恐れるかのように、イナが言葉を遮る。
イナ「僕には…できません」
ユニ「・・・。」
イナ「我儘に聞こえるかもしれないけれど、言わなきゃいけないんです。僕は幸せじゃなかった。君がいない間ずっと。君がいなくてずっと悲しかったし、悲しくて不幸だった」
ユニ「・・・。」
イナ「僕の時間は、二人で歩いたあの海辺でずっと止まっていたんです」
ユニ「・・・。」
イナ「ヘジョンとは随分前に別れたんです。幸せにもしてやれず、お互いを傷つけただけだった。周りの人たちを不幸にして、僕自身も不幸だった。君のいない間に、僕はすっかり変わってしまったんです」
ユニ「…そんなことないわ。目の前にいるあなたは、あの頃のままです」
イナ「もう二度と君を失いたくない。このまま君を手放すわけにはいかないんです。僕を救ってください」
ユニ「・・・。」
ユニは悲しげに目を伏せた。
ユニ「私は…私には…もうそんな資格はありません」
イナ「・・・。」
ユニ「ごめんなさい。私は娘と夫を愛しているし、幸せになろうと努力しているんです」
イナ「・・・。」
ユニ「このまま…そうやって生きていきたいんです。私はあなたを不幸にするだけ」
イナ「・・・。」
ユニ「ごめんなさい」
イナは彼女をじっと見つめていた目をふっと外の景色へと逸らし、ぎゅっと口を結んだ。
イナ「すまないと…そんな言葉を口にしないでください」
ユニ「・・・。」
イナ「君からその言葉は…決して聞きたくない」
ユニ「・・・。」
+-+-+-+
イナがいなくなった後も、ユニは長い間そこに座っていた。
ユニ「今になって…どうして…」
+-+-+-+
ここで一旦区切ります。
前からそうなんですが、イナの呼吸が常にかすかに震えていて、イヤホンをしているとその震えのせいでものすごく緊張が募るのですよ^^;
今回もありがとうございます。
返信削除同時ツイ、あらすじ、英語字幕と復習していましたが、やはり、こちらで翻訳を読ませて頂いて、完全にストーリーを味わうことができます。
私もついにジュンくんに堕ちましたよ( 〃▽〃)
画面を思い出しながらドキドキして読ませていただきました。
返信削除お忙しいでしょうが、これからも宜しくお願いします。
だめだぁわー。イナにずっとなかされる。ふぅーーーー。
返信削除イナ大好き。
忙しいのにありがとうござました。今日も、ハングルがんばります!!
いつも 楽しみにしています。ドラマをみて雰囲気だけでも十分楽しめます!!さすが役者さんだなと感心させられますが…あとからyujinaさんの翻訳を読ませて頂きあらためてまた涙したり笑ったりしています!! もうじき折り返し地点ですね♪この先どうなるか楽しみです(*^^*) DVD化される時 字幕はyujinaのがいい~って本気で思ってますよ(^-^)vこれからもよろしくお願いします♪
返信削除お待ちしておりました。
返信削除ありがとうございますm(_ _)m
やはりyujinaさんの翻訳なしではドラマをちゃんと見た気がしません。
ジュン…いい味出していますね(^-^)クールでただの自信家かと思いきやホットで純で鈍ですね(笑)
ハナちゃんもかわいい)^o^(
yujinaさんのコメ大好きです��
でも私ハナの携帯音も好きなんです(#^.^#)
8話part2楽しみにしていますm(_ _)m
Yujinaさん はじめまして。ここ数日、こちらを知って
返信削除利用させていただいています。ソシ、ユナのペニエヨ。
韓国語は4月から始めたばかりなのですが、字幕版が我慢
できずに新大久保で海賊版DVD買ってサランピ見てます。
当然、あらすじを追うだけでした。Yujinaさんの素晴らしい
訳と細かな描写にまいりました。見たシーンが浮かんでき
ます。本当に感謝しています。トワジュショソカムサハムニダ。
@lovely hayato
返信削除同時ツイみながらドラマみても泣かなかったのに yujinaさんの翻訳に号泣。登場人物の気持ちの揺れがすごく、伝わってきます。ほんとにいつもありがとうございます。
ラジオも聞きました。思っているより若いお年に聞こえてびっくり。年齢気になる~(笑)
ぴゅるる~ん断固反対同盟 (笑) 思わずププッと笑っちゃいました
返信削除気づけばもう中盤ですね ジュンとハナの恋の行方も気になるけど イナとユニ 二人の恋も気になる でもきっと韓流ドラマ独特の展開が待ち受けているんでしょうね
yujinaさんの翻訳を読むと映像を観ていなくても情景が思い浮かびます
素敵な翻訳に感謝です
ありがとうございます
こんにちは(^^)/
返信削除今回も素敵な翻訳ありがとうございます(*^^*)♪
イナの感情が溢れだし
ユニを抱き締めたあの瞬間...
胸がギューッてなりました(T-T)
やっぱりイナはイナだった^^
ジュンがハナに対しての自分の気持ちに正直になり始めたんですね^^
Yujinaさんの翻訳で、微妙な言い回しまで知ることができて、とても嬉しいです(*^^*)
本当にありがとうございます(*^^*)♪
待ってましたー!お疲れ様です(*`∪´*)ゞ
返信削除ユニは体が悪いんですね…失明何てことになるんでしょうか…
幸せになって欲しいと心から想いますね…。
お疲れ様でした。今回も心が震える翻訳をありがとうございました。
返信削除ドンウクだけは…やっぱり受け入れられません。
鼻の形が違いすぎるし…わざとそんな風に整形したん?と疑ってしまいます(^^;)
後半、楽しみにしています♪
はじめまして。読ませてもらってました。お疲れさまです。
返信削除英語字幕ではわからなかったニュアンスが、こちらでやっと納得って感じです。
はぁ、やっぱり。イナ・ユニは悲しい。エゴン・シーレが出てきたのでそんな予感です。
グンちゃんも、台本に集中してそっけないってスタッフさんが。きっとだんだん重く悲しくなっていくのでしょうか(T^T)ジュン・ハナの周囲の人たちの存在が、物語の緩衝材になってくれるといいな。
これからもそっと毎日覗きにきます。
ありがとうございます。
こんにちは。
返信削除今回もご苦労様でした。
翻訳を読ませていただいてる最中情景が浮ぶんですよ。
ほんとうらやましいほどの文章力!
つぶやきもツボです。
イナとユニのシーンに涙しています。
せつなすぎて・・・
次回たのしみにお待ちしています。
こんにちは、毎回拝見してますが、今回も自然と画が浮かんできて、
返信削除夢中で最後まで読んでしまいました。
ドラマも華境に入って来てますます楽しみです。
これからも、よろしくお願いいたします。
yujinaさん お疲れ様でした
返信削除映像だけでは 分からないところが yujinaさんの訳で 解明され も~~~~~ ドキドキですわ❤❤
いつもの和みのある文章に 癒されながら 見せていただいてます
後半も待ってます!! ゆっくりで構いませんので~~
よろしくお願いします(#^.^#)
yujinaさん、八話の翻訳今か今かと首をなが~くして待ってました。(笑)
返信削除等々、イナとユニが出会えたんですね!?
でも、また別れの予感が・・・・
また、ユニは病気になってしまったんですか?
一方で、ジュンとハナが近ずいて来た予感が・・・
早く続きが知りたいし、ジュンがハナに会いに行って、ユニに会いそうですよね?
早く続きが見たいです。(^o^)
翻訳お疲れさまでした。
返信削除イナとユニの描写、小説を読むようでした。
視聴してる時はいまいち感情移入出来なかったんですが、yujinaさんの翻訳で涙が。
ドラマはこれからがようやく盛り上がっていきそうで楽しみです。
ラジオ、上品な美しい声がすごく印象的でした。
いつもありがとうございます(^^)
返信削除細かい描写に気付かなかった場面は戻って確認しながら、読ませて頂いておりますw
どなたかも仰ってましたが、私もこちらの字幕でドラマが観たいです(*^^*)
これからも楽しみにしています♩よろしくお願いします。
Yujinaさん、待っておりました!
返信削除本当に素敵な翻訳をありがとうございます。
イナとユニの再会、そしてギュッと抱き締めるシーン…もう、胸がドキドキして、本当に切なくて、嬉しいのに悲しくて…映像を思い浮かべながら、入り込んで読ませて頂きました。後半も、楽しみに待っております。よろしくお願いします。
ラジオ出演!聴かせて頂きました!
素敵なお声から、美しいお姿を想像しました♡
yujinaさん♪
返信削除ありがとうございます♪
ジュンの心のうごき*~ハナの心???なんなの???~ジュン「フラフラと高鳴る胸を押さえた」「はあ 最高にキマッたな」‥ジュン♡ 私の心~フラフラです(*^_^*)
ひゅるるん断固反対同盟!賛同します!!(^^)!
美しいシーンだなあ~とぼ~と見とれている私‥光のコントラストが美しいのですね♡
フェルメールの絵画を見てるようです~((*´∀`)
映像に集中して♪
yujinさんの翻訳を堪能して♪ラブレイン一色です♡
いつもありがとうございます。
返信削除ラジオ聞かせていただきました。
とっても大変な作業おつかれさまです。
翻訳するのって本当に大変ですね。
出来れば本にして頂きたいです。そんな話はないですか?
でたら絶対買いますね。
嬉しい!ありがとうございます!!
返信削除ツベも削除され(ToT)もしかして、もうアップされないかな?と心配しておりましたf(^^;
英語字幕だと、何となく理解はできますが、情緒にかけるから、Yujinaさんの小説のような解説がなくちゃやっぱりサランビの面白さは伝わりません
本当に毎回楽しみで、ちょくちょくサイトをチェックしてますf(^_^;
お忙しいところ本当に毎回ありがとうございます!!
毎回、ありがとうございます。
返信削除Yujinaさんの突っ込み(?)も楽しく拝見しています。
小説のように素敵に流れていく文を読むと、情景が目に浮かびます。
もう私にとっては、本放送とセットで楽しむものとなっています。
これからもUPされるのを楽しみにしています!!!
はぁ~~~、セリフがわかるってすばらしい!!!
返信削除本当に感謝です。
Yujinaさんの文章、大好きです。
・・・と、写真のチョイスもいい感じです。
後半も楽しみにしています。
待っていました(^O^)/
返信削除いつも勝手にすいません。
ラジオを聞いて作業が大変だと知り、益々感謝でいっぱいです(+o+)
後半もよろしくお願いします!!!
yujinaさん♪
返信削除また来ています*
夜更けて見るラブレインは‥大人のせつなさが募ってきます~((´ー`)
上から目線のジュンの台詞が大好きです!
yujinaさんの表現の素晴らしさに今宵も酔いながら~今日という日にさようなら~ヾ(^^ )
おやすみなさい♪
サランピは、イナとユニの純愛に、心打たれます。
返信削除50代になってからの二人は、視線だけで感情を表現し、さすがです。
yujinaさんの翻訳と、二人の表情が、胸にせまります( ; ; )
ありがとうございます♪
返信削除翻訳にとてつもない時間が掛かることも知りました。
ただただ有難くて・・・感謝感謝です。
これからも無理のないよう続けていただければ幸いです。
いつもありがとうございます。イナの震える声には30年の思いが、ヒシヒシ伝わります。
返信削除プレイボーイのはずなのに、中学生みたいなジュンも可愛いくて萌え!
ハングルを、直に感じとれる様に頑張ります!
yujinaさんへ はじめまして ぴよかです
返信削除何度か 拝見させたいただいてます。
ありがとうございます
今回は 読んでいて 涙がでてきました・・
二つのカップルの想いが伝わってきてとってもステキな翻訳ですね
これからもよろしくお願いします
8話part2も翻訳ありがとうございました。
返信削除とても時間がかかる翻訳を素敵に文章におこしてくださり
物語を感じることが出来ます。ただただ感謝です。
本当にありがとうございます。
ありがとうございました♪実は風邪をひいてしまったりしてゆっくり読む時間がありませんでした。やっと今日ゆっくり読むことが出来ました。イナとユニやっと再会出来ましたね。ジュンとハナのやりとり笑っちゃいますね。それにしてもハナはちょっと鈍感過ぎるかも。ハナの天然ぶりがジュンのツボだったりするかもしれませんね。いろいろ気になります。引き続き読ませていただきます(*^^*)
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