さっそくどうぞ
+-+-+-+
旭川駅。
列車を降り、混雑したホームを歩いていた彼は、急いで走ってきた女性とぶつかり、たちどまって顔をしかめた。
女性「すいません!」
そこへ「ハナ!早く来いよ」と呼ぶ声が聞こえ、彼女は声の方を振り返った。
女性「うん、分かった」
彼にもう一度「すいません」と微笑みかけ、女性は足早に立ち去っていく。
彼はその後姿を見送り、背を向けた。
+-+-+-+
あたり一面真っ白な雪の中、カシャ カシャと固く冷たいシャッター音が響いていた。
ジュンの覗くファインダーの向こうで、モデルがうっとりとポーズを決める。
手を止め、「ちょっと休もう」と声を掛けた彼は、アシスタントからコンテを受け取った。
助手「またどうなさったんです?」
ジュン「あのさ、ジュエリーだっつーと何ですぐ”真昼の雪の女王”になるんだよ?(?)」
助手「まぁいいじゃないですか。”ダイヤモンド、心をときめかせる”…(笑い)専門じゃないですか。ときめくのは」
ジュン「ときめく?さぁな。俺、今まで誰かにときめいたことなんかないけど」
助手「まさか!あんなにたくさんの女性と付き合っておいて、”ときめいたことない”って?」
ジュン「ないな」
助手「・・・。」
ジュン「その代わり…」
助手を振り返った彼は…
ジュン「俺にときめかせるのが専門だ」
パチッとウィンクしてみせた彼に、助手は苦笑いで答える。
コンテに向き直り、静かにモデルに視線を向けると、
モデルは嬉しそうに彼に手を振った。
彼は軽く助手を振り返る。
ジュン「ほらな」
モデルのアピールを無視し、視線をそらすジュン。
感心するとともに、ふと思った助手は素直に疑問をぶつけた。
助手「けど、どうしてなんです?」
ジュン「何が?俺、仕事のときは色目使ったりしないだろ」
助手「はぁ?!いつ?!」
ジュン「疲れた。あと30分休もうぜ。車に戻ってる」
足早に去っていく彼の背中に、俄に不安になったモデル。
助手が「30分休憩だそうです」と声を掛けると、何か思いついたのか、顔をパッと輝かせたモデルは急いで彼を追いかけた。
+-+-+-+
ジュンの乗る車の助手席が開き、モデルが黙って乗り込んできた。
ジュン「何だよ?」
モデル「とっても寒くて」
ジュン「・・・。邪魔されたくないんだけど」
モデル「邪魔しません。温まったら行くつもり」
ジュンは黙って資料をめくる。
モデル「それにしても、だいぶ違うみたい」
ジュン「何が?」
モデル「人違いかしら。”その気になればどんな女でもたったの3秒で落とす” -これがキャッチフレーズだって知ってます?」
ジュン「あぁ、その噂か」
モデル「噂だったんですか?」
ジュン「・・・。」
モデル「ただの噂ならどうして放ってるんですか?」
ジュン「誰が嘘だって言った?」
モデル「じゃあ…ホントなんですか?」
ジュン「メンドクサイからさ」
モデル「?」
ジュン「プレイボーイだと思われてる方が楽だ。そうすれば女に追い回されることもないし、皆警戒するから」
モデル「ふーん(嬉)」
彼は資料を置き、彼女を見つめた。
ジュン「俺、女と付き合うと落ち着かないんだ」
モデル「どうして?」
ジュン「愛を信じてないから」
モデル「・・・。」
ジュン「初恋が…すごく辛くてね」
モデル「本当に?私も」
ジュン「(ニヤリ)」
モデル「大丈夫ですよ~。話してください。私、誰にも言いませんから」
彼は身を乗り出し、彼女の顔を覗き込んだ。
ジュン「けど、(?)」
モデル「(嬉)」
ジュン「こんな感情初めてだ」
モデル「・・・。」
#彼女の目を見つめている視線を、一瞬唇に移したのが合図。ギャーたまらん
目を閉じる彼女に、彼もまた目を閉じ、顔を寄せる。
そのとき…
「ぴゅるる~ん 電話ですよ~~~ん♪」
陽気な音に、二人はビクリと体を離した。
ジュン「???」
着信音「出てよ 出てよ♪ 出ないと承知しないわよ~~~ん♪」
ジュン「?????」
ポケットから音の主を見つけ出した彼は、首をかしげる。
ジュン「何だこれ?」
+-+-+-+
うんざりして電話を出たジュンは、ぶっきらぼうに応答ボタンを押した。
ジュン「もしもし」
女性(声)「あれ?韓国の方なんですね」
ジュン「えぇ」
女性(声)「私の携帯なんです。どこで拾われました?」
ジュン「拾った覚えはないけど。僕だってポケットに入ってるの今気付いたんですよ」
女性(声)「え?何でポケットに?どうやって?」
ジュン「…そんなの俺が聞きたいね」
女性(声)「すぐ行きます。そこ、どこですか?」
ジュン「あんた誰です?」
+-+-+-+
旭川駅。
ハナは電話に向かってため息をついていた。
ハナ「はぁ。そんなところにいらっしゃるなんて。待っててください。すぐ行きますから」
電話を切った彼女は、「早く行こう!」と同行者に声を掛け、走りだした。
ハナ「富良野よ!会わなきゃいけない人がいるの!早く!」
バスに乗り込んだ彼女に、仲間が訪ねる。
チョンス「会う人って誰?」
ハナ「^^」
チョンス「韓国に帰る前に引き返して会いに行くなんて、いったい誰なんだよ?」
ハナ「秘密♪」
チョンス「僕たちにも秘密なのか?」
ハナ「ねぇ、私たち3人きりで旅行に来たと思えばいいでしょ」
チョンス「僕たちどんな仲間だ?札幌農大の三銃士だろ。秘密なんてズルイぞ」
テソン「(チョンスに)だからさ、三銃士同士もっと仲良くなろうぜ」
ハナ「(テソンに)ありがと、先輩♪」
二人はチョンスの目の前でパンと手を合わせ、笑った。
+-+-+-+
再び車に戻り、さっさと再開するジュン。
#そして再び流れ始めるアモーレな音楽
ジュン「とにかく!…こんな感情は初めてだ。お前はどこか特別なんだ」
嬉しそうに目を伏せ、再び熱い視線を向けるモデルに、
ジュンはもう一度接近する。
そこへ…
助手「室長!室長!」
助手が慌てた様子でドアを開けた。
ジュン「何だよ!!!」
助手「クライアントが撮影中止しろって」
ジュン「…何だって?」
+-+-+-+
ジュンと共にロッジにやってきた助手は、席に着くなりノートPCを広げた。
広告主とビデオチャットがつながる。
ジュン「突然撮影中止とは何事ですか?」
広告主「ハ~イ、ソ室長。ワ~オ、綺麗に映ってるな。あ、私の顔、上手く映ってるかな?」
ジュン「一体何事かって聞いてるんですよ」
広告主「どう考えても”雪の女王”は陳腐すぎると思いましてね。ティアラをつけて冷たい表情なんて、いくらでも見たことあるでしょ」
ジュン「(イライラ)そうですか」
広告主「それで考えてみたんだが、(指を鳴らし)イ秘書。(秘書から受け取った雑誌の写真を広げて見せ)こんなふうに撮ってくれますかね?」
ジュン「?!」
広告主「これを見た時にね、うちの商品のイメージとピッタリ来たんですよ。こんなふうに。こんなふうに撮ってくれればいいんです」
ジュン「(呆)パクれと?」
広告主「いやまぁ…パクれと言うわけじゃない。そうだ、オマージュと言うことにしよう」
ジュン「・・・。」
広告主「最近はみんなオマージュだオマージュだって、そう言うでしょ?あっはっは」
思わず立ち上がったジュンを「我慢してください」と助手が止めた。
広告主「どうしたんだ?」
助手「(画面に写り、苦笑い)ははっ」
広告主「まさか、失礼にも黙って行ったわけじゃないですよね?」
助手「ちょっと接続が途切れたみたいで」
広告主「ソ室長はプライドの高い人だってみな知ってはいるが、最近はそれじゃうまく行かないって分かってますよね?」
広告主「最初アメリカからやって来た時は小難しい写真で一時注目されたがね、今じゃ誰もいないでしょ」
おそるおそるジュンを見上げる助手。
ジュン「小難しいんじゃなくてシックなんだ」
画面の中では「そんなにお高くとまってると…」と広告主の勢いは止まらない。
ジュンは怒りに任せ、ノートPCを乱暴に閉じた。
+-+-+-+
外に出たジュンを助手が追いかけた。
助手「どうなさるつもりなんですか!」
ジュン「黙ってろ」
助手「ダメです。絶対にダメです!1億のCMなんですよ。今度またフイにしたら僕たちホントにダメになりますよ」
ジュン「ダメになるって誰が?!俺はソ・ジュンだぞ!」
助手「(?)」
そこへ入った着信は先ほどの広告主から。
助手は「どうしよう!」と慌ててジュンに訴えた。
ジュン「出るな。俺に任せとけ」
そういうジュンの言葉に従いきれず、逃げるように電話を取る助手。
残されたジュンが怒りに身震いすると、また陽気な音が聴こえてきた。
「ぴゅるる~ん 電話ですよ~~ん」
ジュン「(電話を取り)何なんだお前!」
ハナ「え?さっき電話した者ですけど。一体どこにいらっしゃるんです?」
ジュン「もう撤収しました。残念でしたね」
ハナ「そんな!来いって言っといて撤収するなんて!」
ジュン「撤収したくてしたわけじゃないですよ。そんなに困ってるなら早く来なきゃダメでしょ」
ハナ「はぁ…。最大限に急いだんだけど」
ジュン「遅かったですね」
ハナ「言葉が過ぎるんじゃありません?」
ジュン「ちっとも。タイミングが合わなきゃ自分で合わせなきゃな。それに、携帯失くしたのはそっちなのに、何で俺がそんなこと言われなきゃいけないんだ?このまま捨てて行くから好きにしてよ」
ハナ「ダメ!捨てるなんて!お、落ち着いてください。絶対捨てちゃダメですよ。またそっちへ向かいますから」
「また行くのか?」と大声を上げるチョンス。
ハナ「で…今どこですか?」
+-+-+-+
電話を切ったジュンは、手招きで助手を呼び戻した。
ジュン「俺のやり方でやるって言ったか?」
助手「クライアントが明日直接いらっしゃるって…」
ジュン「何だと?こいつそんなことも解決できないのか」
呆れて「車を回せ」というジュン。
助手「に、逃げ出すんですか?!」
+-+-+-
雪道を走る赤い車。
ジュン(電話)「キムチーム長、広告のことは僕に任せて。日本に来ても仕方ないと伝えてください。それに、撮影コンセプトは僕が決めるから気にしないでくれと。…それじゃ僕にパクれと言うんですか?そっちの広告会社に面倒は掛けないからご心配なく」
ブチッと電話を切ったジュンに、運転する助手は不安を隠せない。
助手「どうするつもりなんです?ちゃんと考えがあっておっしゃったんですか?」
ジュン「(目を閉じ)黙ってろ。構想中だ」
助手「室長は金持ちの息子だから大丈夫かもしれないけど、僕はホント大変なんですから」
ジュンは窓の外に視線を移し、小さくため息をついた。
+-+-+-+
ジュンたちは雪山の中の白いホテルに到着した。
部屋に入り、腰掛けてホッとした瞬間、また電話がなる。
「ぴゅるる~ん」
うんざりした表情で、鳴り続ける電話を見つめるジュン。
荷物を運んできた助手は「さっきから何です?その電話」と笑った。
ジュン「誰かが落としたんだけど、お前がちゃんと対処しとけ」
ジュンが放り投げた電話を受け取り、応答した助手は驚いて顔を上げた。
助手「室長、もう2回もすっぽかしたんですって?!僕にどうしろと?」
ジュン「何を?」
助手は怒り心頭している電話の向こうの人物に、おだやかに話しかけた。
助手「来いって言ってるのは僕じゃなくてですね。えぇ、僕たちここに来たのは今日が初めてで、場所もよく分からずに。ここまで来ていただかなきゃいけないみたいですね…」
そう言って、電話の向こうの大声に思わず耳を押さえる。
そんな様子にお構いなく部屋を出ようとしたジュンが、もう一度顔を覗かせた。
ジュン「おい、もう電話切れよ。スタッフ同士で飯でも食おうぜ。あのモデルも呼んどけよ」
+-+-+-+
「また移動しなきゃいけないわけじゃないよな?」
怒りに震えるハナに、チョンスが無理に明るく言葉をつないだ。
チョンス「このまま予定通り富田ファームに行って、美味しい物食べて遊んで、携帯は明日…」
ハナ「許さない!!!」
チョンス「…無理だよね^^;」
バス停まで走って来たハナはテソンに声を掛けた。
ハナ「先輩、私一人で行くね」
テソン「一緒に行こう」
ハナ「ううん。携帯を返してもらうだけだし。富田ファームにも連絡してあるでしょ」
テソン「俺たち二人で行っても仕方ないだろ。一緒にバイトした場所なんだし、発つときも一緒に挨拶しなきゃな」
ハナ「それもそうね。そうだ、まだ宿を決めてなかったでしょ。探して連絡してよ」
チョンス「仕方ないよぉ~。ハナの言うとおり、まず宿を探そうよ、先輩」
テソン「(ハナに)なら、携帯返してもらったらすぐ来なきゃダメだぞ」
ハナ「うん^^」
チョンス「そしたらさ、3人でラーメン食べに行こうよ」
テソン「そうだな」
ハナ「うん」
テソン「それから、お前が見たいって言ってたダイアモンドスノー、夜明けに一緒に見に行こう」
ハナ「(嬉)…そうする?」
チョンス「(ぶるっ)僕はヤダ!寒いのに山に登らないといけないんだぞー」
ハナ「あ…じゃあ、別に行かなくてもいいよ」
テソン「二人で行こう」
ハナは照れくさそうに頷いた。
チョンス「ダイアモンドスノーってさ、一緒に見た人と恋に落ちるって言うんじゃないか」
テソン「(慌てて)何ふざけたこと言ってんだよ!」
そこへ、やって来たバスに気づき、ハナは駆け出した。
テソン「ハナ!」
ハナ「ん?」
テソンは自分の携帯をハナに投げてよこした。
ハナ「ありがとう!」
微笑むハナに、テソンたちも笑顔で手を振った。
しばし和みの時間をどうぞ
+-+-+-+
ホテルのジュンの部屋。
ハナが落とした携帯を覗き込み、助手が何やら大笑いしているところへ、着替えたジュンが戻ってきた。
ジュン「どうした?」
助手「(ドキッ)」
ジュン「他人の携帯盗み見たのか?」
助手「いや、盗み見たわけじゃなくて」
ジュン「マナーのないやつだな。女だけど、写真とか見たわけじゃないよな?」
助手「見てませんよー」
ジュン「…可愛かったか?」
助手「(ニヤリ)まだ(?)」
ジュン「女の写真フォルダなんて何が入ってるかもわからないのに不用意に見てどうすんだ。いちおう写真屋のくせに他人の写真をむやみに見ちゃダメだろ」
助手「…見てもいないくせに」
ジュン「・・・。」
助手「(思わず思い出し笑い)この人、面白いですね」
ジュン「何が?」
ハナの電話を取り出し、また笑い始める助手。
ジュン「そんなに可笑しいか?」
助手「…ところで、遊びにでも出掛けるおつもりですか?」
ジュン「遊びに行くわけじゃない。会食」
助手「先に考えましょうよ。明日の撮影までに場所とコンセプトを決めるって大口叩いたでしょ」
ジュン「なぁ、ここでお前と一緒にいて考えが浮かぶか?お前も準備しろ」
+-+-+-+
スッキリした装いに黒いマフラーをぐるりと巻き、もみあげの角度もばっちり確かめたジュンは、
ソファーに戻って足を組み、ワインを一口含んだ。
ジュン「・・・。」
ふと、助手が置いて行ったあの携帯電話に目が留まる。
しばらく眺めていた彼は、何気なくホームボタンを押した。
「ギャーーーー!!!!」
突然画面いっぱいに血まみれのゾンビが叫び声を上げる。
ジュンは驚いて電話をほうり投げた。
ジュン「おっ!!!!…何だこれ?ガキか?全く…」
体制を立て直し、電話にそっぽを向いた彼の視線は、
ゆっくりとまた電話へと戻った。
ジュン「・・・。」
もう一度携帯を覗き込むジュン。
ジュン「”この世で一番熱い果物は?””ネクタリアン(천도복숭아:천도=1000℃という意味あり)” ぷはっ!」
そうして彼は、彼女の携帯を覗き、延々と笑い転げた。
どんどん写真をめくっていくジュン。
農作業をしている写真や、植物の写真が続く。
ジュン「自分の写真は一つもないのか?」
そこへ、文字の入ったスライドが現れる。
ジュン「…with Love?」
再生した彼は「あっ」と声を上げ、画面を覗き込んだ。
+-+-+-+
日が傾いていた。
バスが停車し、ハナが疲れた様子で降り立つ。
#この着地の様子がペンギンみたいで可愛い
ハナ「あっちだ!」
ジュンのいるホテルを見つけた彼女は、再び歩き出した。
雪かきをして作られた道を進んでいると、ふいにやって来た車に驚き、彼女は悲鳴をあげる。
「ドシン!」その場に尻もちをつくハナ。
赤い車が目の前に停まった。
ジュンの助手が運転席から飛び出してくる。
助手「だ、大丈夫ですか?」
ハナ「気をつけてください。急に出てきたら危ないじゃないですか」
車の中でジュンが声を掛けた。
ジュン「おい、何て言ったんだ?」
助手「すいません!あのー いっぱいすいません!」
ハナ「・・・。」
ジュン「(助手に)カタつけて早く行こうぜ」
ニヤニヤと笑うジュンをハナは睨みつける。
ハナ「・・・。」
ジュン「怪我してないみたいけど。服も大丈夫だし。(小声で)まぁどうにかなっても分からないくらいヒドイ格好だけど」
ハナ「・・・。」
「If you have any problem...」と今度は英語で話し始めた助手が手に持ったメモを、ハナはひったくるように受け取った。
ハナ「(韓国語で)分かりました」
ジュン「!」
ハナ「ヒドイ服に何かあったら連絡します」
「しまった」とでもいうように口を開けるジュン。
さらに大きく口をあんぐり開けた助手はかろうじて声を出した。
助手「韓国の方でしたか?!すみません!あの…」
ハナ「ちゃんと運転してください。外国でこんなマナーのない真似しないで」
つかつかと歩み去る彼女の後ろ姿を、ジュンはそっと振り返った。
+-+-+-+
ホテルに入ってきたハナ。
自分の携帯に電話を掛けるが、応答はない。
フロントに訪ねても「携帯電話の預け物はない」と言われ、韓国人客の部屋もプライバシーだからと教えてはもらえない。
ハナは仕方なくロビーに腰を下ろした。
+-+-+-+
その頃。
ジュンたち一行は派手に乾杯の声をあげていた。
向き合ったモデルに意味深な視線を送るジュン。
彼女はさっそくジュンの隣にいた助手をどかせ、自分が彼の隣におさまった。
#「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
…とか何とか言ってるうちに、あっという間に頬を赤く染め、ジュンにしなだれかかる彼女。
すっかり盛り上がった彼らは、カラオケBOXへと場所を移した。
+-+-+-+
夜が深まっていく。
ハナはロビーの片隅から何度も電話を鳴らし続けた。
+-+-+-+
カラオケBOXの室温はどんどん上がっていた。
喧騒の中、時計をチラリと確認したジュンは、隣で待っていたモデルをそっとつつく。
ジュン「行こうぜ」
二人はそっと席を立った。
+-+-+-+
つながらない電話に、ハナはたまらず立ち上がった。
ハナ「何なのよ、この人!!!」
フロントの女性に不審に思われ、苦笑いして再び座り直す。
ハナ「会ったらただじゃおかないから」
+-+-+-+
うつらうつら…。
いつの間にか居眠りしていたハナはハッとして起き上がり、時計を覗いた。
12時。
こっそりとフロントを覗いた彼女。
そこに人の姿はない。
ハナはエレベーターに乗り込み、客室フロアへと向かった。
隣の部屋。またその隣の部屋。
携帯を鳴らし、順番にドアに耳をそばだてて回る。
ある部屋の前へ来た時。
ドアの向こうから「ぴゅるるん ぴゅるるん」という賑やかな音が聴こえてくる。
ここだ!
ハナは激しくドアを叩いた。
ハナ「もう!何度すっぽかす気よ!」
イライラしてドアノブを握ると、カチャッと音を立て、ドアが開いた。
ハナ「!」
周りに人がいないのを確かめ、そっと暗い室内を覗いてみたハナは、恐る恐る声を掛けた。
ハナ「いらっしゃいますか?」
入り口の電気をつけ、もう一度声を掛ける。
ハナ「すいませーん」
電話を鳴らしてみた彼女は、ソファの上から「ぴゅるるーん」と声を上げた携帯を見つけ、飛びついた。
ハナ「はぁー 助かったぁ!」
携帯を持ち、すぐ部屋を出て行こうとした彼女は、ふと立ち止まった。
ハナ「ダメよ。何時間待ったと思ってるの?このままタダでは帰れないわ」
彼女は部屋に細工をし始める。
+-+-+-+
すっかりいたずらを終え、大満足で洗面所を出た彼女は、
そこに戻ってきたジュンたちに気づき、慌てて一度出てきたドアの中へ戻り、息を潜めた。
「暑いわ」
さっそく服を脱ぎ始めるジュンたち。
ハナ「何なの?まさか!今ここで?!」
そして勢い良くベッドにダイブ!!!!
…したジュンたちは、鋭い痛みに大声を上げた。
布団をめくると、そこには妨害するかのように固いものがたくさん置いてあり…。
「もしかして、ダーリンがやったのかしら?」
そう口走った彼女に、ジュンは本日連れ込んだモデルに嫉妬深い恋人がいることを知った。
モデル「そんなことはいいから、続けましょうよ」
ジュン「ちょっと待った」
モデル「どうしたの?ひょっとして怖くなった?」
ジュン「・・・。」
モデル「可愛い♪」
ジュン「(笑って)怖いわけないよ。ちょっとだけ待ってて」
彼は立ち上がり、洗面所へと向かった。
そして…
ジュン「わぁーーーーー!」
ハナ「きゃーーーーー!」
ジュン「何だお前!」
モデル「何なの?」
ハナ「ちょちょちょ、ちょっと待って。えーと、私はつまり!」
ジュンを見た彼女は、見覚えのある顔に「あっ」と声を上げた。
ハナ「”ヒドイ”男!!!」
ジュン「・・・。」
モデル「泥棒?」
ハナ「泥棒ですって?私が?違いますよ!(ジュンに)私、”ヒドイ服の女”ですよ。さっき会ったでしょ」
ジュン「・・・。」
ハナはポケットに入れてあった携帯を差し出した。
ハナ「私のです。このために富良野の原っぱまでで行って、こんなホテルまで来たんじゃないですか。あなたのせいで。そうでしょ?」
ジュン「・・・。」
ハナ「さっき私と電話で喋ったでしょ!覚えてますよね?」
ずっと黙っていた彼は、ハナの携帯を引ったくり、冷たく口を開いた。
ジュン「最初からそのつもりでポケットに電話を入れたのか」
ハナ「え?な、何ですって?!」
モデル「この人、泥棒ですか?」
ハナ「違いますってば!!!(携帯を)返して」
ジュンは携帯を握った手を背後に回した。
ハナ「返してくださいよ!」
部屋の中を逃げるジュンをハナが追い回す。
ベッドに倒れ込み、「あ゛-!」と鈍い叫び声を上げる二人。
ジュンは彼女に馬乗りになり、何とか取り押さえた。
モデル「どうしよう、どうしよう」
ジュン「(モデルに)お前何してんだ?」
モデル「え?」
ジュン「俺が何とかするからさっさと帰れ」
ハナ「放してよ!」
ジュン「誰かに気づかれたらどーすんだ!(彼氏に)刺されて埋められてもいいのかよ!」
モデル「すみません先生!帰ります!」
ジュン「現場でな」
慌ててモデルが出ていくと、「放してよ!」と騒ぐハナを見下ろし、彼はニヤリと笑った。
+-+-+-+
助手がおどおどとホテルに戻ってきた。
彼が部屋のドアを開けると、そこは散らかり放題で誰の姿もない。
助手「?!」
「ポツン ポツン…」
浴室から水滴の落ちる音。
ほのかな明かりに誘われ、彼はそっと中を覗いた。
#これ、「氷の微笑」の音楽じゃないか
助手「ギャーーーー!」
赤く染まった洗面台。
そして、真っ赤な血の色で鏡にしたためられたメッセージに、
彼は悲鳴を上げた。
내가 사람으로 보이니?
私が人間に見える?
+-+-+-+
ここで一旦区切ります。
分からんところ残りすぎ。
経験上、ある一定回数聞いてわからないときは、時間をおいて耳をニュートラルにしてから出直したほうがいいので、そうします。時間が限られてるので。
(?)になってるところがいくつも残ってますがすみません。
お仕事の速さに感動してます。私にはところどころしか理解できなかったので…訳して頂いた台詞を見てサランピを見るとあぁこんな風に話しているんだとわかって楽しめます。
返信削除いつもありがとうございます。
ありがとうございます!お忙しいのに仕事が早すぎです。寝てないんじゃないですか?
返信削除昨日のがまだ頭に残ってるのでじっくり翻訳楽しませてもらいます!いつも感謝です。
おはようございます!
返信削除今回はちょっとチャラいジュンの
台詞に笑ちゃいました。
ほんと毎回ありがとうございます。
おはようございます。寝ていらっしゃいますか・・・?
返信削除と、言いつつ覗いてみました(笑)早速の翻訳、本当に有難うございます。
昨晩のラブレインの場面が浮かびます・・・
イナとは全く反対のジュン・・・可愛くて活発なハナ、今後がとても楽しみな
ラブストーリですね。yujinaさん・・・緑の文字もとても素敵で、私は大好きです!!!
今回も早くにありがとうございます♪
返信削除「金持ちの息子」で、イナが大成功を収めたことが分かり嬉しくなりました。
温泉で抱きしめたシチュエーションがどんな会話だったのか、今から楽しみです。
女ったらしだけど純粋なジュン、たまりませ~ん!
さっぱり台詞は解らず観ていましたが、早口で言葉数が増えているので、翻訳は大変だろう、、、、ゆっくり待とうと思っていたら、もうアップされている。。。
返信削除大変な作業なのに、ホントにありがとうございます♪
お陰様で、嬉しい朝方です☆
おはようございます(^-^)/
返信削除覗いてみたら…
早速5話がUPされてて嬉しいです♬
yujinaさんは…ちゃんと睡眠はとれたのでしょうか?
心配になっちゃいます(>_<)
昨夜は、わからないなりにもテンポ良く進むドラマに時間の経つのも忘れて楽しめました💗
更に、yujinaさんの訳でスッキリ〜o(^▽^)o
後半も楽しみにしてます♬
でも、くれぐれもムリはしないで下さいね‼
ありがとうございましたぁ(*^◯^*)
いつも楽しみにして読んでいます。
返信削除現代版になってセリフが多いし、70年代より早口ですよね(^-^;
Yujinaさん♪
返信削除今回も素早いUP…ありがとうございます!!
お仕事お忙しいなか…本当に尊敬しちゃいます♪
現代ということで台詞も早いですが、若者言葉?なんかもあるんでしょうか…聞き取れないです(--;)
Yujinaさんの翻訳が頼りです!!
毎回楽しみにしています。
皆さんも気にしていますが…くれぐれも無理しないで下さいね!!
yujinさん
返信削除すごいです!早い!
とてもうれしいけど・・
無理しないでくださいね!
楽しませてもらいますねーーー!!!
ありがとうございます!
おはようございます(*^^*)
返信削除早速UPしていただき嬉しいです(*^^*)♪
ジュンもハナも
現代っ子らしく、よく喋りますね(^-^;
翻訳も大変な作業だと思います(^-^;
本当に、いつもありがとうございますm(__)m
yujinaさんのペースで、これからもよろしくお願いします(⌒‐⌒)♪
余談ですが、チョンスが
森三中の大島さんに似てると思ったのは
私だけでしょうか?(*^^*)ククク
毎回楽しみにしております。
返信削除画面を見ながらこんな感じかなと想像していますが、Yujinaさんの訳を読んで「そうだったんだ」と理解しています。
それにしても今回はまったく違うドラマのような感じになっていてびっくりしました。
お忙しいとは存知ますが、次も楽しみにしております。
本当に有難うございます。
もう、こんにちはの時間ですね。
返信削除Yujinaさん、毎回ありがとうございます
昨日観たドラマの翻訳がこんなに早く観られて、本当に感謝しています。
情景が目に浮かび、楽しんでいます。
これからも、よろしくお願いいたします。
きゃーっ.おもしろいです! 特にはハナのキャラクターが変で楽しい♪
返信削除それに,Yujinaさんのコメントにあったように,ジュンの視線が...(照.
現代版になってテンポが速くなって,言葉の掛け合いが楽しいですね.
いつもありがとうございます!! 続きが楽しみです.
素早い翻訳♪
返信削除本当にありがとうございます!
現代に入り‥予想通り、テンポが早くなり‥ん???
台詞も早く、言葉数も多く大変だと思います!‥でも‥とてもとても楽しみなんです(^o^)
5話のツボ‥「もみあげの角度もばっちり確かめたジュンは‥」です!( ´艸`)
わぁ~嬉しい。こう言った内容たったのですね! 5話は、今までの中で一番楽しく、早く内容が
返信削除知りたくて 昨夜、中々 寝つけませんでした。 素敵な翻訳、ありがとう ございます。
続きが、楽しみです。 あ~^^気になる、気になる…。♪
いつも素早い翻訳ありがとうございます。やっぱり詳しくわかると話にもっともっと入っていけて楽しめました。これで今夜も堪能できます。これからもよろしくです。
返信削除いつもありがとうございます(^o^)v
返信削除インナの時は 少し理解できたのですが、5話からは 展開や 喋りが早く
理解不能。 yujina さんが 頼りです。(^_^;)
5話の 翻訳で 色々 納得です。 チャンベウの チャラ男も バッチリ
有難うございます。 後編 楽しみに待っています!
いつもありがとうございます(^o^)v
返信削除インナの時は 少し理解できたのですが、5話からは 展開や 喋りが早く
理解不能。 yujina さんが 頼りです。(^_^;)
5話の 翻訳で 色々 納得です。 チャンベウの チャラ男も バッチリ
有難うございます。 後編 楽しみに待っています!
いつもありがとうございます(^o^)v
返信削除インナの時は 少し理解できたのですが、5話からは 展開や 喋りが早く
理解不能。 yujina さんが 頼りです。(^_^;)
5話の 翻訳で 色々 納得です。 チャンベウの チャラ男も バッチリ
有難うございます。 後編 楽しみに待っています!
いつもありがとうございます♪♪現代版はテンポよく面白さも加わって楽しく読ませて頂きました。yujinaさんのつぶやき本当に楽しいです♪♪読んでいてそろそろかな~なんて期待しちゃってます(^-^)/お仕事しながら本当に大変だと思いますが、たのしみはあとでもいいので、無理しないでくださいね☆
返信削除始めてコメさせていただきます(^^)v
返信削除なぜか5話だけがスマホでは見れず、6話がなかなか見れなかったんですが、色々な場面が想像出来るくらいよく分かる内容ですごく助かりました
(⌒∇⌒)ノ"" 今から後半を見させて頂きます!!
ありがとうございましたヘ(≧▽≦ヘ)♪
ありがとうございます
返信削除すごく楽しく読ませていただいています。